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[読書感想文]14歳からのケンチク学

2月頃に読んだ山形浩生さんの『経済済のトリセツ』で紹介されており、冬休みの休暇を利用して読んでみた。

タイトルからは中高生向け、建築に興味がある若者向けの本ようだが、どの年代の方が読んでも好奇心がくすぐられて、また満たされる本であると思う。

というか、この本を中学生がふむふむ面白いね!と言っていたら驚く。いやでも、誰でもデザインであったように山中俊治の講義を受講する中学生もいるし、最近の中学生はすごいかもしれない(よう分からんけど)

各章がそれぞれの建築  ✖️  〇〇というお題目になっており、〇〇には様々な学問の教科が並んでいるエッセイ集となっている。

学問の教科は数学、国語、英語という基礎から、家庭・体育・倫理、そして修学旅行!? と幅広く、好きな、もしくは好きだった教科のエッセイから読むをお勧めする。各エッセイの関係性はないので、順不同で読んでも全く問題はない。

目次(教科一覧)は以下の通りで、好きな教科の3つを選択して、簡単な感想を書いておく。

数学「幾何学を開放する」
生物「建築は、もっと自然に近づくことができる」
美術「つくること、みること、かんがえること」 
英語「建築も英語も、コミュニケーションがものをいう」
政治経済「建築を動かす社会の仕組み」
情報「あらかじめ、つくり方をつくる」
算数「小数点がない時代、建築はどうつくられてきたか」
国語「建築と言葉は切っても切れない」
家庭「住み手の視線で建築を考える」
化学「私たちはマテリアル・ワールドに生きている」
課外授業「物語を紡ぎ、空間を形づくる」
倫理「分からないものへの憧れ」  
体育「次世代の建築家に求められる運動能力」
歴史「教科書にのる建物」
物理「安全と豊かな空間を生み出す構造」
地理「風土と建築の新しい関係」
音楽「聞こえない音と見えない空間を読む」
修学旅行「旅に出ることは、建築と出会うこと」

目次

  1. 1章 生産性の基礎の話

  2. 2章 いま読むべきケインズ

  3. 4 章 情報科学・イノベーション・建築と政治経済

政治経済「建築を動かす社会の仕組み」


本書を読むきっかけとなった文章であり、建築と政治経済の関係性をダイナミックに論じており、本当に読み応えがある。

内容は以前のNoteから抜粋するが、建築の話から政治(民主主義的なもの)の本質、都市の構造が表すある社会の特徴、公共投資による経済や、最後にはローレンス・レッシング著作『CODE』のフレームワークから人間の行動を規制・規定する役割としての建築という話で終わる。

このエッセイで素晴らしいところは、建築が持つ影響力が視覚的な様式・設計だけではなく、社会や都市のありようや振る舞いまで規定する力まで及んでいることを示している点である。

情報「あらかじめ、つくり方をつくる」

『建物』と『建築』の違いから、『建築』という言葉には何か建てられたモノと何かを建てるコトの2つの意味を含んでいる点から話が始まる。

そこから、建てるコトはモノとモノの関係性に秩序を与えることであり、秩序関係(建て方)を定義する設計者としての建築家と順序関係を具現化させる施行者の分離が進んだ歴史的な経緯や、分離が進むある一定の条件と話が進む。

ここまであれば情報技術をかじった人なら頭にスッと入ってるが、このエッセイで面白いのは、建築といえばモノから秩序関係となる情報を抜き出して、操作・定義するという話だけではなく、抜き出した情報が再度モノと一体化してモノの秩序・関係性を再構築することに言及していることだ。

歴史的に分離された関係性・境界線が高度に発達した情報社会においては曖昧になっているという主張が面白い。

生物「建築は、もっと自然に近づくことができる」

ある生物の特性や特徴をヒントにして開発した製品は色々と聞いたことがなかったが、生物を模範した建築という考え方があることが教えてくれのがこのエッセイ。

毎日働いているビルは究極の人工物だし、生き物と建築がどうやって関係性を持つのか、このエッセイを読んだ後でも正直なところ分かっていないが、、本書の特徴である『建築』という概念を考えたことがなかった視点から覗いてみたり、全く新しい概念を繋げてみるという醍醐味を味わえる。

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