さようならゴムと観念

絵に描けたなら、危なっかしい空。黒くて白い、自己表現の空。目が動かせない。そのまま吸い込まれたい。手に取ると透明な雲のなかへ。形はあるようでない水蒸気のなかへ。

背中が置き去りにされる。太陽がささる。あぁわたしの目、太陽を見たってどうせ光れない。だから背中で挨拶。もうこれで4回目。首筋に汗がたれる。髪を縛ろうかと腕のゴムを引く。強く引いてしまった。反動で、柵の外へ飛びだした。勢いよい。そのまま5階下へ飛び降りてゆく。間に合わない。下を見下ろす。通行人の頭に落ちる。通行人、驚いてきょろきょろする。ゴムも逃げたかったのかしら。あたしよりひと足先に、ちがう宇宙へ。憎たらしい。わたしも連れていってくれ。
通行人、そのゴムを道路の端にやって去っていく。一瞬前までわたしの一部であったゴム。さようなら。

わたしの持ち物、ついにこの体だけとなった。生まれたときから変化がない。シワと観念ばかり増えていく。変な汗がでる。

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