見出し画像

【読書メモ】今週読んだ5冊



『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』2巻 二丸 修一


・最初にひとつ。詳しくはこの後の5巻の感想で書くけれど、あまり褒められた作品でないことは先に記しておきます。読んじゃったのでいちおう感想は書く。
・一般的にラノベにおいて「負けヒロイン」、つまりメインヒロインとの恋の勝負に負けるという風潮が強い、主人公の幼なじみの女性キャラが「絶対に負けない」というコンセプトの異性愛ラノベ。
・ボーイッシュ女子に対して主人公が「女らしくない」と言ったあと、「こういうのは最近では性差別になっちゃって各方面からいろいろ言われるんだよね」となるくだりがあって、盛大にイラッッッとした。
・ヒロインを落とすのではなく、主人公がヒロインたちに落とされるサマを描いていく構図。ラノベ特有の鈍感主人公だとこうなるのね。
・学生が集まって行なう青春的なことがYouTuber(作中では「ウィーチューバー」と表記)活動なのが時代を感じる。
・YouTubeは「ウィーチューブ」、LINEは「ホットライン」なのにTwitterはそのまま「ツイッター」という謎。その線引きはどこでされるんだ。
・ヒロインたちが男主人公を取り合ってドロドロする展開が続く。やだね~、こういうの。
・今回は恋愛バトルというよりは、スポーツ系みたいな他の男性キャラとの対決展開の比率が多い。萌えというより燃え。
・1巻では結局悪者はいなかったという展開だったけれど、今回は明確な悪役が登場する。マジで嫌な奴かつ気持ち悪く描かれているので、1巻の爽やかな展開が好きだった人は好みが分かれるかも。
・男性主人公のラブコメなのに1巻ではむしろ男性キャラのほうが多かったけれど、今回はその反動なのかなんなのか、女性の新キャラが5人くらい登場する。一気に増えたなおい。

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』3巻 二丸 修一


・今回は南国リゾート編。主人公があからさまに性欲を出してくるタイプで正直好みではない。
・高校生が主人公だけど、動画配信者としての活動や芸能絡みの展開が多いのであまり学園モノという感じはしない。良くも悪くも。

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』4巻 二丸 修一


・いわゆる「男嫌い」の女性キャラが登場。イヤな予感がする! すごくイヤな予感がする!
 しかもそのキャラはヒロインの一人を溺愛していて、すごく乱暴にまとめるといわゆる「百合キャラ」。異性愛作品に登場するやつ。イヤな予感がする! すごくイヤな予感がする!
 ・・・ええ。案の定、当て馬でしたとも。なんかヤな感じ。
・ラブコメに言ってもしょうがないんだろうけど、「恋愛から逃げるな」という恋愛至上主義な価値観がグイグイ押し出されてきてキツいな~
・「恋愛は人生の無駄だ」という考えのキャラに、ヒロインが「考えを押しつけるな」と説教をするシーンがある。だけど、この作品こそ(異性愛)恋愛至上主義を押しつけていないかな。

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』5巻 二丸 修一


・ハーレム物だけど、いちおう主人公がヒロインたちにモテるだけの理由付けはされている。「男主人公だから」というだけで無条件に女性キャラから好かれたりはしない。
・「カタコト日本語の面白外国人」キャラが出てくるけど、こういうのもいいかげん古いと思うんだけどなあ。
・そして、ここからが褒められたものじゃない部分。ネタバレあり。

 異性関係のしがらみを一掃するために、異性愛者の主人公が自身を同性愛者だと周囲に偽る展開がある。控えめに言って最悪すぎる。それもサブエピソードの一つとかではなく、物語の主軸として、しかも今回のクライマックスによりにもよってそういうシーンを入れてくる。異性愛の物語を盛り上げたりシナリオをまとめるために都合よく同性愛的要素を利用するのは残酷だし、不誠実に感じる。
・作者あとがきで「エンターテイメントは心のお医者さんの一種だと思っています。自分も漫画やアニメや小説に心を救われてきました。いま、その端っこにいる一人として、おさかの(本作の略称)が皆さんの心を少しでも明るく楽しくするきっかけの一つになればいいな、と思っています」と書いてある。この巻で心を救うどころか、悪い意味で一刺しする展開を書いた自覚がマジでなさそう。このあいだの「コロンブス」のMVの時も思ったけど、「思想が弱い」人たちって恐ろしいね。

『完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件』 小野 一光



福岡県北九州市で7人が惨殺された凶悪事件が発覚したのは、
2002年3月のことだった。逮捕されたのは、松永太と内縁の妻・緒方純子。
2人が逮捕された2日後に現場入りを果たして以来、
20年間にわたってこの“最凶事件”を追い続けてきた事件ノンフィクションの
第一人者が徹底的に描く、「地獄の連鎖」全真相。

Amazon商品ページより

・5歳と10歳の子どもを含む7人が監禁・虐待・殺害された、日本の犯罪史に残る事件。そのうち6人は同じ一家。その全容を余すことなく記録した576ページのドキュメント。
・事件概要はいたって客観的に淡々と語られているのに、事件の凄惨さに心臓を鷲掴みにされて、嫌な汗が流れ出る。それでも先を読まずにはいられない。
・被害者はなぜ、いつでも逃げられる状況だったのに逃げなかったのか。それは被害者もまた殺人に加担させられていたから。警察に駆け込んだら自分も捕まる、と。
 さらに、度重なる感電虐待への恐怖で被害者たちは正常な判断能力を失っていた、と本書は論じる。被害者同士を相互監視させて分断することで犯人への反抗を起こさせないようにもしていた、とも。最終的には殺人と死体遺棄をさせることで罪の意識を植え付け、いよいよ「逃げられない」と思わせることに成功した。なんか、ベクトルはぜんぜん違うけれどブラック企業でもそういうのありそうね。みんな、少しでも職場がおかしいと思ったら逃げた方がいいよ、マシな職場は世の中にいっぱいあるから。
・虐待方法について、感電にこだわっているのに異様な執着心を感じる。もともとは布団販売店を経営していた時に社員に対して行なったのがきっかけと言われている。本当にとんでもないなこの犯人。
・対象を極限状態に置いて恐怖を与えることで、マインドコントロールはこんなにも簡単にできる。家族同士で殺人をさせる、ということも犯人は容易くやってのけた。本当に怖い。
・一介の詐欺師だった犯人が大量殺人者になったのは、読み終えてみても「なぜ?」と思う。金を巻き上げるだけなら7人も殺さないでよくない? 本書は「完全犯罪のために口封じで殺したのだろう」という論調だけど、なんか得られるものとリスクのバランスが取れていない気がして、犯人の異常性が分かる。女を金ヅルとしか見ていないクズなのだけど、ただのクズには7人も殺せない。本書も、犯人の本当の心は真っ黒な闇に覆われているように見えない、と結論付ける。到底理解の及ばない人間が世の中には確かにいることは、あらためて心に留めおく必要があると感じた。





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?