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ななぷー の宝探し

公園の古びたベンチに腰掛け

タバコに火を付け、ゆっくりと

煙を肺に入れる。

時折、缶コーヒーを

口に運び、時間をかけて

メンソールの味を楽しむ。

季節外れの猛暑日が続くが、

早朝のこの時間は、まだ過ごしやすい。

人影まばらな公園の隅にある

ケージに囲まれた砂場の中に

ピンクの帽子を被った女の子がいた。

ななぷーだ。

相変わらず一生懸命にスコップで

砂をすくって宝物を探しているようだ。

宝物は砂に混じった小さな貝殻だったり

変わった形の石コロだったりする。

見つけた宝物は、また砂に埋めて

隠してしまう。

ななぷーは、夏のある日に現れた。

聞けば、日中は暑すぎるので

朝のこの時間だけ外で遊べるのだとか。

お母さんが洗濯物を干し終えたら

おうちに連れて行かれるので

ななぷーの宝さがしは超真剣で

私の問いかけにも上の空だ。

ななぷーが宝探しの手を

止めるのは、お別れの時だけ。

「じゃあ、行ってきますぷー」

「いってらっしゃいぷー」

語尾にぷーをつけるのが

私たちのルール。

これっきり一日誰とも話さない。

もう少しだけ

暑い日が続けば良いなぁ。

ご支援賜れば、とても喜びます。 そして、どんどん創作するでしょう。たぶn