コンビニにあるショートストーリー
私は、毎朝必ず1本のTULLY'S BLACKを飲む。
コンビニに行き、ラックからTULLY'Sを
勢いよく引っこ抜いて、
急ぎ足でレジへ向かう。
レジカウンターの方向を見ると、
あの女がいる。
その女性店員は、年の頃は20代前半だろうか。
黒髪ショートでノーメイクのぽっちゃりした
その店員は、いつも接客態度が悪かった。
言葉遣いこそ丁寧だが、何故だが常に
イラついており、それが表情や
語気の荒々しさから垣間見られた。
袋に入れた商品を、客が大きく手を
伸ばさないと取れない自分の手元に置く。
釣銭は、客の手に投げ捨てるように渡す。
客の問いかけにキレ気味に答える。
この店員に悪気が無いことはわかっていた。
本人なりに慣れない仕事に一生懸命
取り組んだ結果がこうなのだろう。
私は、この店員を見る度に
何をどう頑張っても周囲や家族にも
認められなかった、あの日を思い出す。
その日も、いつものようにTULLY'Sを持って
会計待ちの列に並んでいた。
前の会計が長引いて少し気が立ってきた
私に女性が明るい声で呼びかけた。
「こちらのレジにどうぞ~」
見れば、あの店員がカウンターから身を
大きく乗り出しながら、ゼスチャー付きで
少し離れた自分のレジカウンターまで
私を誘った。
快活な女性に生まれ変わっていた店員は、
自然な笑顔でTULLY'Sを袋にいれた。
私は、買うつもりが無かった
SEVENSTARS MENTHOLも注文した。
会計を済ました後に私は少し後悔した。
「ありがとう!」
こんな労いの言葉一つかけれなかった。
殻を破るべきは私の方。
夏空の下、職場に向かう足は軽やかであった。
ご支援賜れば、とても喜びます。 そして、どんどん創作するでしょう。たぶn