直筆にこだわる
先日、同僚の身内にご不幸があり、会社から社員一同としてお香典を送ることになった。
私の所属は営業部なのだが、諸事情により総務関連の仕事も兼任しているため、上司からの指示を受け早速コンビニに香典袋と筆ペンを買いに走った。
そう、こんな風にある日突然訪れる筆ペンの出番。
引き出しに入っていた筆ペンは、前回の出番から時間が経ちすぎていたせいか、もはや書けなくなっていた。
例え普段書く字が上手じゃなくても、こういう時にさらさらっと書ける人をみると、それだけで尊敬してしまう。
私は一年前から月に1度、趣味でボールペン字を習っているが、筆ペンとは全くの別物だ。ボールペンで書けても、筆ペンでは同じようにはいかない。
しかしこれは私に任された仕事なので、やるしかない。
香典袋を目の前に置き、しばし動きが止まる。
筆ペンで書くのと同じくらい縦書きが難しいことを思い出す。私が書くと中心が揃わず、少しずつ斜めにずれていってしまうのだ。
これらを踏まえ、ひとまず何度か練習してみる。
…恥ずかしすぎる。
こんな字で書かれたお香典を受け取る同僚を思うと、とても申し訳なく、失礼に当たるとすら思えてくる。
香典袋や祝儀袋を用意する度に襲われるこの思いに、思わずため息がこぼれた。
それでも少しでも何とかしようと出来る限り練習をし、約一時間が経過した頃に「これ以上は無理だ」とようやく観念して本番に挑んだ。
出来上がりは決して美しいとは言えないが、悲惨とまでは言えない程度に何とか持ち直した。ただ、改善の余地は大アリだ。
字の練習は、独学よりもちゃんと習ったほうが良いと聞く。
緊急事態宣言が解除されたら、早速筆ペンのレッスンも始めようと決めた。
せめて、字の上手な父親に見せても恥ずかしくない字が書けるようになりたい。
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