一人芝居脚本「君の裸を撮らせてください」
はいどうも詩奶です。
今日はどうしても、どうしても、どーしても、
演劇脚本が書きたい!!!
しかも、
一人芝居のやつがいい!!!
というわけで、
まぁ、朗読、声劇台本などに使用してもまぁ成り立つは成り立ちますが、
演劇という媒体の、舞台とかでやった方が面白いだろうなぁという書き方で書き綴りました。(多分ボイスドラマも面白いけど、うん、演劇だな)
ちょっと語りますが、一人芝居の台本って、マジでその人次第で登場キャラクターが変わって、同じ話?ってなるのが面白いんですよね。まぁどの台本でもそうはなります。けど、役者の素が見える台本は一人芝居だと私は思っています。どのセリフを強調するのか、間は?動きは?呼吸は?などなど。
その演じる方の癖が見えてくる。面白いよねー。
じゃ、語るのはこの辺で、本文と情報諸々どうぞ。
またいつか、語りましょうね。その時は細かく。
登場人物
僕:写真を大学で学んでいる。同じ大学の女子にどこか好意というなの変態と執着を持っている。
時間配分
15分ほど(演出によって、変動あり)
※注意事項
こちらの脚本は舞台・演劇上演をすることを前提に執筆したものです。
台詞と台詞の間との補間は、ほとんどこちらで指定せず、あえて演じる方に任せた状態の記載をしています。好きに演じてみてください。
誤字脱字あったらすみません。(見つけ次第直します)
以下本編ーーー
『君の裸を撮らせてください』
僕「僕は君の裸を撮りたい」
僕「きっかけはたくさんある。君の笑う姿。歩く姿。髪を掻き上げる姿。タバコを吸う姿。目を霞ませた姿」
僕「かっこよく言えば大学生フィルター。キモく言えばストーカー。まぁどう思われても構わない」
僕「ただこのレンズに、収めたいと純粋に思うだけ」
僕「でも」
僕「でも」
僕「でも」
僕「僕は君を撮れない」
僕「どううしても」
僕「撮れない」
僕「惹かれてしまうことが、こんなにも」
僕「指を震わすなんて」
僕「手を冷たくするなんて」
僕「思っても見なかった」
僕「どうしても、」
僕「どれだけ君をレンズに入れても」
僕「僕の目がそれを通さない」
僕「頭の中が君で膨らんでいく」
僕「ある日、目が合った」
僕「レンズ越しに向かってくる。君」
僕「鼓動」
僕「汗」
僕「呼吸」
僕「早くなる。漏れ出していく」
僕「目の前にたった彼女」
僕「何かを言う」
僕「僕に向かって」
僕「今までで一番近いのに、何故か聞こえない」
僕「遠くで聴いている声が、鮮明に浮かぶ」
僕「気づいたら、君は言う」
僕「聞いてる?って」
僕「だから僕は言った。真面目に、無神経に、愚直に、」
僕「君の裸を、撮らせてください!」
バシン
僕「鈍く乾いた音」
僕「一瞬の、シャッターよりも速い、それ」
僕「気づけば君はどこかに行ってしまった」
僕「野望は途絶えた」
僕「僕は写真を撮った。ただ課題に沿った、答えに近づくためだけの資料として」
僕「あの日以来、実習以外、大学でカメラを持つことはなくなった」
僕「なんならそれが苦しいから、大学が終われば速攻外へ出ていく」
僕「駅」
僕「繁華街」
僕「横断歩道」
僕「ニョキニョキしてるビル」
僕「……無機物ばっかりだ」
僕「そうだ動物園へ行こう」
僕「ゾウ」
僕「ライオン」
僕「チンパンジー」
僕「誰もカメラに興味は、ないみたい」
僕「疲れた僕は」
僕「ちょっとそこらへんのベンチに」
僕「腰をかけてみた」
僕「しばらくボーッと空を眺めて、」
僕「少し眩しいからパシャりと撮った」
僕「するといつのまにか隣におばあさんがいた」
僕「おばあさんは言う」
僕「アメちゃんいる?」
僕「こんにちはでも、いい天気ですねもない、突然のカウンター挨拶」
僕「僕は会釈しかできなくて、そっと手を差し伸べた」
僕「大納言小豆味」
僕「微妙だ」
僕「しかし目先にいるおばあちゃんのなんたる笑顔」
僕「何も考えず、アメを食べる」
僕「……意外と美味い」
僕「もう一度目が合う」
僕「変わらない笑顔、」
僕「僕は自然と、首にかけたカメラを持った」
僕「笑顔は、変わらないままだった」
僕「そこからは会釈をして、何もなかったように、彼女は立ち上がっていってしまった」
僕「隣に座ってすぐに撮ったから、家に帰ったらあまりの素人写真でびっくりした」
僕「笑った」
僕「とっくに溶け終わった小豆の味が口の中に香る」
僕「久しぶりに人を撮った」
僕「大の字になった体を起こしてパソコンを開く」
僕「これでよし…!」
僕「数日後、1000枚の名刺が届いた。俺の名前、電話番号、メールアドレス、SNSのQRコード2つを載せた、表は日本語、裏は英語の名刺。最初は財布に10枚入れた」
僕「そして外へ出る」
僕「いろんなところへ行く」
僕「公園、お店、河原や山の中。時間の余す限り、行けるところへ行ってみる。
僕「そうすると出会う人々に言うんだ」
僕「すみません!私こう言うもので、学校で写真を学んでいまして、よろしければその姿を、撮らせてもらえないでしょうか?」
僕「もちろんよろしければ」
僕「もちろん撮った写真は、許されればこちらから送る」
僕「断る人はほとんどいなかった」
僕「僕はカメラを構える」
僕「親と子に」
僕「老夫婦に」
僕「飼い主とペットに」
僕「部活動の友達」
僕「恋人同士」
僕「ありとあらゆる人へ、シャッターを切った」
僕「ありがとうございます!!!」
僕「その言葉が増えていく度、パソコンは出会った方々でパンパンになった。写真も連絡先も、メールも、時には1日でやり取りしきれないほどになった」
僕「そんな生活を続けていたある日、1つのメールが届いた」
僕「そのメールはとある広告会社から。送り主との接点は、以前公園で撮った母と子。その父親だったのだ」
僕「もしよろしければ……一度お会いして……お仕事を依頼……え!?」
僕「大学2年生。まさか夢の、写真家としてのチャンスが巡ってくるなんて…!」
僕「すぐに僕は受験で提出した以来のポートフォリオを作成した。出来上がった頃には朝の7時。その日の授業はポシャったけど、寝て起きて、再度確認して、あの日よりも震える指で、送信ボタンを押した」
僕「翌週、僕はスタジオにいた。販促用ポスターをこれから撮る」
僕「モデルがスタジオの中央に立つ」
僕「授業に近い風景。けれど、ここは夢の場所」
僕「よろしくお願いします」
僕「ポージングするモデル」
僕「カメラを構える」
僕「シャッターを切る」
僕「バシンという音が、」
僕「過去、振られた時の音に似てる気がした」
僕「それから、仕事は少しずつ増える」
僕「ありがたいことに、無作為に撮っていた頃の僕がちょっとした話題になって、それをみた同業者から仕事をいただくこともあった」
僕「気づけば、大学との兼ね合いがギリギリできるラインを攻める日々」
僕「ついには大学側にもバレて、実技を免除してくれることも」
僕「幸せな日々、誰もが羨む理想の道筋、差しのみで酔っ払った友だちにはそう言われた」
僕「カメラを持つ、シャッターを切る」
僕「それが本望」
僕「シャッターを切る、確認をする」
僕「それが義務」
僕「出来上がる。喜ばれる」
僕「それが日常」
僕「はい撮りまーす」
バシン
僕「思い出す。何か」
僕「休みを取った」
僕「カメラを触らない。そんな日を、過ごす」
僕「家で1日を潰そうと思ったけど、結局つまらないからポケットに突っ込めるだけのものを持って、扉を開ける」
僕「道路、商店街、駅、電車、降りて、」
僕「……」
僕「ついたのは学校」
僕「時間は5限目。最終時限」
僕「バレても困らない大講義室の後ろで、よくわからない芸術理論を聴く」
僕「チャイムの音」
僕「寝てた奴らも起きてわちゃわちゃ帰っていく」
僕「落ち着くまでスマホのゲームをする」
僕「昔、あの人がハマってたゲーム」
僕「次々とクリアする、難なく、次へ行く」
僕「だいぶ音が消える、そろそろかと、今のゲームをクリアしたら行こうと考える」
僕「その時だった」
僕「懐かしい声」
僕「咄嗟に顔を上げる、反応できなかった、あの頃とは違って」
僕「目の前にはあの頃と変わらない、君の姿」
僕「一瞬ボーッとする、けれど過去の羞恥が覆い被さって、立ち上がり、去ろうと準備をし始める」
僕「ねぇ」
僕「君は言う」
僕「裸、撮って」
僕「学校、駅、電車、降りて、歩く、商店街、道路」
僕「そこには君もいる」
僕「今日はカメラがないと行ったら、着いていくと君は言った」
僕「明日は?と言うと、今がいいと言う」
僕「多分これは大学生フィルター、悪く言えば気まぐれ」
僕「本来はそれで生きていた、だから」
僕「戻ってみたくもあった」
僕「家につく」
僕「つけばすぐにカメラを用意する」
僕「背後で仄かに煙草の匂い」
僕「確かめるように、不意に、その姿を映す」
僕「笑う君。まだでしょって髪を書き上げて、もう一回それを撮る」
僕「また笑う君。その姿にまた指を動かす」
僕「吸い殻に煙草を押し付け、いい?と遠くから聞こえる声」
僕「うん。いいよ」
僕「僕はその時から、無音になる」
僕「シャッターだけが時間を刻む」
僕「君の仕草が記憶されていく」
僕「けれど、」
僕「あの時がよかった」
僕「……ごめん、」
僕「僕は君の裸が撮りたかった」
僕「あの頃に」
僕「撮ってみたかった」
僕「数ヶ月後。僕は持っている仕事を一通り終わらせて、」
僕「今日飲みにいく?」
僕「少しだけあの頃に戻った」
僕「贅沢な選択だと思われて良い、」
僕「もったいないと言われても良い、」
僕「ただ」
僕「彼女の姿をまた」
僕「見てみたいから」
僕「いつかまた、僕から言えるように、カメラを持って」
僕「君の裸を、撮らせてください」
バシン。
完。