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うす墨の迷路

 677文字

  見えない、見えない濃霧で周りが見えない、飛び出す風景突然曲がりカーブ、そんな走行をしていた私の目の前に、濃霧の空中に朝日殿がドーーン。
 
 霧の中のハリネズミ・1975年、霧につつまれたハリネズミ、この作品はまだ見ていない、読んだ事がない。

 まだ十代だったと記憶しているが、題名も作者も分からない、薄っすら今話題のロシアの地に住む作家だった記憶しかない。
 濃霧が発生する度に思い出される本の中の映像、お爺さんと子供が濃霧の中を歩いているシーン、そして、何処を歩いているのかさえ分からなくなり、延々と濃霧の中を歩き迷ってしまう、という内容だった気がする。

 新雪を歩く、真っすぐ歩いている筈、後ろを振り返るとグニャグニャ曲がっている足跡、視界はスッキリ・シッカリ見えているにもかかわらずなのに、曲がっている、人間の感覚とは頼りないものなのね~となる。
 
 薄~い墨の世界、ご仏前・ご霊前ののし袋がこの濃霧で浮き上がって来た。
 今ではしっかり印刷され100均等で買うと真っ黒なご霊前の文字、殆ど筆で書くことなどしなくなってしまった。
 書こうとしても、下手な文字では相手に失礼になりそうな文字しか書けない私は、あらかじめ印刷された物を買ってしまう。
 本来ご霊前は薄墨を使用して書くと教わった事を、この濃霧の風景で思いだした。
 意味は貴方が逝ってしまい、悲しくて悲しくて涙があふれ出て、黒い墨がこの様に涙で薄くなってしまいました。
 という意味でご霊前は薄墨を使うのだそうです。
 
 ご霊前の文字だけでも練習しようかな ⁈ と考えてしまった濃霧の朝。
 

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