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吸い込まれてsubway

京都市内を北上する電車移動は
あと一歩で届かない歯痒さがある。

バスは混む。
LUUPは人目が気になる。
自転車は坂道や通り抜け禁止区域を
避けてのルート設計が難しい。

京阪本線と烏丸線は微妙にすれ違っていて
出発地と目的地のいずれも駅近だとしても
どうにもならない徒歩距離が生じてしまう。

でも、雨の日の京阪の地下線に乗ると
心がじんわりとした幸せと
忘却のような平和に満たされる。

イメージにある完璧な
地下鉄がそこにある。

利用者の少ない駅の
地下への入り口に
吸い込まれる瞬間から
浮遊感がはじまる。

生きる証が蒸気となって霧散すると
洞窟のようにカラッとした
仄暗さに紛れた足音は
灰のように軽やかになる。

紺色の席に身を沈め
短いガタンゴトンに
ふわふわと揺れたあと、
流れと同化した
魚のように泳いで地上に出る。

出口への階段に踊り場で分割されたり
外の見通しがよいと希望が湧く。

烏丸線によくある
外の希望をもたらす光が
絶望の長階段に呑み尽くされることなく、
柔らかい光に注がれて上へ向かえるたび
静かな至福を味わう。
歩き出すStairway to Heaven

吸い込まれて夢心地になれる駅には
旅も物語もある。

孤独に砕かれてなお
独りに還れない時のドアウェイ。

お読みくださりありがとうございました☘️🌈 初めての方、あなたに出会えて嬉しく思います。フォロワーの方、いつも見守ってくださってありがとうございます。 共感できるところや、心の琴線に触れるところがありましたら、ぜひ応援の気持ちを届けてください。心が温まります❤️🌟