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第6話「宙イルカと妖精の洞窟」

<<宙の猫島(そらのねこじま)のストーリー>>
不眠症の月が羊と間違えて猫の数を数えているうちに本当に猫があらわれて、天空に猫の島を作ってしまいました。天空の猫島に住む7匹の猫たちはお月さまとおひさまに見守られながら、自然がいっぱいの不思議な島を舞台に、楽しいことや面白いことを探しながら毎日を過ごしています。今日も7匹の猫たちが何やら面白そうなことをはじめました……

<<配信について>>
「宙の猫島」は天空の島で暮らす7匹の猫の物語です。毎週金曜日に1枚の新作絵画をアップロードします。4枚の絵でひとつの物語になっています。4週目に作者・なかひらまい が書いた物語をアップロードします。絵と一緒に摩訶不思議な物語を楽しんでください。インスタグラムのフォローもよろしくお願いします。
●ストーリーのアーカイブ:https://note.com/7cats/n/n87b25b5bdd58
●インスタグラム:https://www.instagram.com/soranonekojima/

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気に入った絵があったらスマホ壁紙をダウンロードしてください。画像を長押するか、PCの場合はマウスの右ボタン(Macはcontrolを押しながらクリック)で画像を保存できます。しあわせの猫島で暮らす猫たちと一緒に日常を過ごしてください。素敵なことがおきますように。

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宙の猫島(そらのねこじま)のメールマガジンでは毎月額装用の絵画をプレゼントしています。絵をダウンロードして額装し、お部屋のインテリアとして使ってください。額装の仕方はメルマガ登録フォームのあるオンラインショップサイトに掲載しています。IKEAの10✕15cmの額にちょうどいいサイズにプリントアウトできます。
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絵と文:なかひらまい

なかひらまいプロフィール:作家・画家。ユング心理学研究会理事。多摩美術家協会会員。著作は『スプーの日記』シリーズ3部作(トランスビュー刊)。千年の間、口伝のみで伝わってきた紀国の女王伝説の謎を追ったノンフィクション『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』、毎日新聞大阪本社版に連載された童話『貝がらの森』ほかをスタジオ・エム・オー・ジーより刊行。ハンドメイドの絵本「小さな絵本」や『宙の猫島(そらのねこじま)』などオリジナル作品を随時発表している。


宙イルカと妖精の洞窟〜その1


宙イルカと妖精の洞窟スマホ壁紙〜その1
宙イルカと妖精の洞窟〜その2
宙イルカと妖精の洞窟スマホ壁紙〜その2
宙イルカと妖精の洞窟〜その3
宙イルカと妖精の洞窟スマホ壁紙〜その3
宙イルカと妖精の洞窟〜その4
宙イルカと妖精の洞窟スマホ壁紙〜その4

第6話「宙イルカと妖精の洞窟」

「今日も1日、がんばろう」
 お日さまは、ひとりそうつぶやくと空の上にのぼっていきました。すると猫島も夜が明け、お日さまに照らされました。
「今日も猫たちは元気かしら。もうすぐ冬になる。寒くないかしら」
 お日さまは猫たちが心配で、猫島の森の中をのぞきこみました。
 猫たちは、美しく紅葉した森の小川で遊んでいました。
「もうすっかり秋なのに、毎日暑いね」
「秋どころか、もう冬なのに」
「夏でもないのに川で遊ぶなんてね」
 猫たちは、口々にそういいながら、冷たい川の水に手足を浸らせて気持ちよさそうにしています。
 森の妖精たちもやってきて、猫たちと一緒に遊びはじめました。
 お日さまは、そんな猫たちを眺めながら、後ろ髪を引かれるようにいつもの道をのぼっていきました。
「それにしても、おかしな暑さだね」
「もっと涼しいところはないのかな」
 猫たちはそういいました。
 すると妖精たちがいいました。
「猫さん、もっと涼しいところがありますよ。こっちに来て」

 妖精たちは、小川の上流に向かって飛んでいきました。小川は森の洞窟の奥から流れていました。
「この洞窟の中はとても涼しいですよ。さあ、どうぞ」
 妖精がいいました。
 洞窟は白い氷の壁におおわれて、冷蔵庫のようにひんやりとしています。
「ここは天国だね」
 猫たちは大喜びです。
 洞窟の中には、宝石のような氷のかたまりがいくつもありました。
 妖精たちは、その氷をくだいてレモンのシロップをかけると猫たちに配っていきました。
「レモンのグラニテです。召し上がれ」
 洞窟の氷は新鮮な島の湧水が凍ったもので水晶のように透明でした。小川の妖精たちの作るレモンのシロップも後味がすっきりとして、おかわりしたくなりました。
 氷の洞窟は、レモンシロップのいい匂いとともに、猫たちがシャキシャキとグラニテを食べる音がこだましていました。

 ココは洞窟の奥をのぞきこんでいいました。
「こんなところに泉があるよ」
「本当だ。なんて美しい色の泉なんだろう」
 猫たちは、泉のまわりに集まってきました。
 泉ではイルカたちが気持ちよさそうに泳いでいました。
「宙イルカさん、こんにちは。今日は一体、どうしたのですか? 最近は滅多に洞窟にはいらっしゃらないのに」
 妖精がそういいました。
「最近、どうにも暑くてね。それで泉にやってきたのです」
 宙イルカたちはいいました。
「本当に暑いですね。こちらの猫さんたちも同じで、今、氷を召し上がっていただいていたところです」
 妖精はいいました。
「今は涼しくていいけど、帰りは大変だな」
 キキがいいました。
 困った顔をしたキキを見て、妖精は宙イルカにこういいました。
「こちらの猫さんたちのお住まいは丘の上です。宙イルカさん、よろしければ帰りに宙の海をわたって猫さんたちを送ってもらえませんか?」
「もちろんですとも」
 宙イルカはいいました。

「では猫さんたち、わたしたちの背中に乗って、しっかりとつかまっていてください。わたしたち宙イルカは、水と宙を自由に泳ぐことができます。水と宙はつながっていますので、ここからあっという間に宙に行けますよ」
 宙イルカたちはそういうと、泉のふちに身体を寄せました。猫たちは息ができるのか少し心配になりましたが、いわれた通りにイルカの背に乗りました。
「さあ、行きますよ」
 猫を乗せた宙イルカたちは、ザブンと水音を立てて、泉の奥深くにもぐっていきました。
 泉のふちでは、妖精たちが手を振っていました。
 宙イルカたちは、青い水の中をスイスイと泳いでいきました。まるで青い夢の中にいるようでした。
 そのうち、遠くからお日さまの光りが見えてきました。ふと見ると、そこはもう、綿アメのような雲の浮かぶ宙の上でした。お日さまは、いつになく力強い光を放っていました。
「お日さまが、こんなに猫島の近くにいる」
「どおりで暑いわけだ……」
 宙イルカがいいました。
 お日さまは、猫たちが心配で自分でも気づかないうちにいつもの道を外れ、猫島に近づいていたのです。
「お日さま、いつも明るい光をありがとう。わたしたちは元気です。心配しないでね」
 猫たちは、イルカの背からお日さまにそういいました。
「いけない、いけない。ついうっかり、いつもの道を外れてしまった」
 お日さまはそういうと、元の道へと戻っていきました。

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