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第8話「光る石の宝物」

<<宙の猫島(そらのねこじま)のストーリー>>
不眠症の月が羊と間違えて猫の数を数えているうちに本当に猫があらわれて、天空に猫の島を作ってしまいました。天空の猫島に住む7匹の猫たちはお月さまとおひさまに見守られながら、自然がいっぱいの不思議な島を舞台に、楽しいことや面白いことを探しながら毎日を過ごしています。今日も7匹の猫たちが何やら面白そうなことをはじめました……

<<配信について>>
「宙の猫島」は天空の島で暮らす7匹の猫の物語です。毎週金曜日に1枚の新作絵画をアップロードします。4枚の絵でひとつの物語になっています。4週目に作者・なかひらまい が書いた物語をアップロードします。絵と一緒に摩訶不思議な物語を楽しんでください。インスタグラムのフォローもよろしくお願いします。
●ストーリーのアーカイブ:https://note.com/7cats/n/n87b25b5bdd58
●インスタグラム:https://www.instagram.com/soranonekojima/

<<スマホ用の壁紙をフリーダウンロード>>
気に入った絵があったらスマホ壁紙をダウンロードしてください。画像を長押するか、PCの場合はマウスの右ボタン(Macはcontrolを押しながらクリック)で画像を保存できます。しあわせの猫島で暮らす猫たちと一緒に日常を過ごしてください。素敵なことがおきますように。

<<マンガ版『宙の猫島(そらのねこじま)』>>
『宙の猫島(そらのねこじま)』配信1周年を記念して2024年2月よりマンガ版を随時アップ。『宙の猫島』の世界はどんどん広がっていきます。
●マンガ版『宙の猫島』:https://note.com/7cats/n/n8c65924264f1

<<毎月、額装用の絵画をプレゼント>>
宙の猫島(そらのねこじま)のメールマガジンでは毎月額装用の絵画をプレゼントしています。絵をダウンロードして額装し、お部屋のインテリアとして使ってください。額装の仕方はメルマガ登録フォームのあるオンラインショップサイトに掲載しています。IKEAの10✕15cmの額にちょうどいいサイズにプリントアウトできます。
●メルマガ登録URL:https://mainakahira.base.shop

絵と文:なかひらまい

なかひらまいプロフィール:作家・画家。ユング心理学研究会理事。多摩美術家協会会員。著作は『スプーの日記』シリーズ3部作(トランスビュー刊)。千年の間、口伝のみで伝わってきた紀国の女王伝説の謎を追ったノンフィクション『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』、毎日新聞大阪本社版に連載された童話『貝がらの森』ほかをスタジオ・エム・オー・ジーより刊行。ハンドメイドの絵本「小さな絵本」や『宙の猫島(そらのねこじま)』などオリジナル作品を随時発表している。

「光る石の宝物」〜その1
「光る石の宝物」スマホ用壁紙〜その1
「光る石の宝物」〜その2
「光る石の宝物」スマホ用壁紙〜その2
「光る石の宝物」〜その3
「光る石の宝物」スマホ用壁紙〜その3
「光る石の宝物」〜その4
「光る石の宝物」スマホ用壁紙〜その4

第8話 光る石の宝物


 オレンジ色の夕焼けの中、猫たちは地下のクニから家に帰りつきました。
「モモが無事で本当によかった」
 リリがいいました。
「さっそく、地下の妖精からもらった宝物を見てみよう」
 キキは妖精からもらった薄汚れた巾着袋を取り出しました。
「妖精は、袋を逆さにして中身を出してはいけないと、いっていたよね」
 ココがいいました。
「そうだった、気をつけなくちゃ」
 キキは、袋の中に手を入れて、そっと中のものを取り出しました。入っていたのは猫の手に乗るぐらいの美しい透明な石でした。
「わあ、きれいだね」
 7匹の猫たちは、うっとりと石を眺めました。
「あれ、まだ中に何か入っているよ」
 キキは「石がひとつ入るぐらいの大きさしかない小さな巾着袋なのにおかしいな」と思いながら、もう一度手を入れると、また石が出てきました。もう一度手を入れると、また石が出てきました。石は手を入れるたびに出てきて、途切れることがありませんでした。
 猫たちは、巾着袋と出てきた石を持って広いおもちゃ部屋まで行きました。ここならいくら石が出てきてもだいじょうぶです。石はとめどもなく袋から出てきました。やがておもちゃ部屋の床に透明な石の山ができました。
「とてもきれいな石だけど、いったい何に使うのだろう?」
 猫たちはその石の使い道がわかりませんでした。
「食べられる石かもしれないよ」
 リリは石をかじると、「痛っ」といってしっぽをふくらませました。
「とても固くて味もないや」
「水に溶けるかな?」
 ルルはボウルに入れた水に石を入れてみました。しばらく眺めていましたが、溶ける気配はありません。
「ゲームに使う道具じゃないかな?」
 ココとモモが石でキャッチボールをはじめました。モモがとりそこねたとき、石で床が傷ついてしまいました。
「頭がよくなる魔法の石にちがいない」
 ミミは石を頭の上に乗せてみましたが、何も変わりはありません。
「何だかわからないけどきれいだね」
 ロロがそうつぶやきました。

 次の日の朝、猫たちはたくさんの石を大きな丸いテーブルの上に運びました。きっと大切なものだから、床に置いたままではいけない気がしたのです。
 窓の外には、大きなお日さまがのぼっていくのが見えました。
 お日さまが空高くのぼるにつれ、透明な石はキラキラとかがやきました。
 すると部屋はあたたかい金色の光でいっぱいになりました。
「これは光を集めるための石にちがいない」
 キキがいいました。

 夜になると、空からお月さまが降りてきました。
「今日は、いい月夜だから、この部屋で眠りたいな」
 ミミがいいました。
 この大きな丸いテーブルが置いてある部屋の窓からお月さまがよく見えるからです。
 猫たちは、テーブルと椅子をどけてベッドを運び込みました。
 ロロは、おもちゃ部屋で白い貝がらを探し出し、お皿にして透明な石をこんもりと乗せました。そして窓辺に小さなコーヒーテーブルを持ってくると、貝がらのお皿を置いてきれいに飾りました。
 猫たちは、すっかり準備が整うと、真新しいシーツにくるまって眠りにつきました。
 夜もふけ、青黒い空にやわらかいお月さまの光があふれてくると、透明な石は青白くかがやきました。
 ひとりだけ夜中まで起きていたロロが、石を月の光にかざして青い光を眺めながらいいました。
「この石は、お月さまの光も集めるようだ」
 みんなは、お月さまの美しい光の中で心地よく眠りました。

 猫たちは、透明な石を部屋中に飾りました。この石のおかげで、昼間は部屋が金色にかがやいてあたたかくなり、夜はひんやりとした青い光につつまれて、ぐっすりと眠ることができました。
 ある日のこと、窓の外で、お日さまとお月さまが立ち話しをしていました。
 ちょうどお日さまがお月さまと空のお勤めを交替する時間でした。
「あれ、石がない」
 キキがいいました。
 気づくと、透明な石が、ほんとうに透明になって、見えなくなってしまっていたのです。それは、ほんのわずかな時間のことでした。お日さまとお月さまが一緒にいる、ほんのひととき、昼の光も夜の光も消えてしまいます。そのとき、石も消えてしまうのです。
「この石は何もない時間も知らせてくれるんだね」
 リリがそういいました。
 猫たちは、石が消えるほんのひとときの不思議な時間を何にもしないで過ごしました。

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