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好きはすぐに迷うから

好きな写真を研究した事がある。
ノートに写真を貼り出して、どこが好きなのか言葉でなぞってみる。好きの解像度を上げるための所作。

日常で、自分が撮る写真以外に触れる機会はそう多くは無い。都会に出た時にタイミング良く催されている展示に足を運ぶでもしないと、SNSで画面上の写真を見る事が大半になってしまう。
オフラインでのコミュニティにも属さず、特定の交友関係もほぼなく、SNSでのリプライがつくことも滅多にないから、誰かと写真の話をする事もない。

そうしているうちに、だんだんと好きの解像度は旧式のDSの液晶画面よろしく粗くなってしまって、曇りきってしまう。
何が描きたかったんだっけ?
そもそもそんな崇高な行為だっけ?
それでも辿り着きたい写真があった気がするのにな?

久しぶりに図書館に行って写真集を借りてきた。
あんなに沢山の蔵書があっても、表紙を捲りたい衝動に駆られる写真集はそう多くなかった。
手に取った数冊を捲っているうち気付く。
モノクロが多いこと。
影の美しさに惹かれること。
静かな写真が多いこと。
そうだった。わたし、そういう人間だった。

そうして好きにきちんと手と目で触れて温度を感じたら、今日はちゃんと迷わず好きな写真が撮れた。誰の為でもなく、自分の為の写真が撮れた。

好きはすぐに迷うから、夜道で迷子になってしまわないように、素敵だと思う写真集を夜標にしようと思う。

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