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[ライブ感想]乃木坂46 31stSGアンダーライブ(2022/12)

2022年12月に全国6都市をまわって行われた、乃木坂46 31stシングルアンダーライブに参加しました。

ライブとしては2回参戦(名古屋DAY1と大阪DAY2。この他横浜でのFINALを配信でも観覧)しましたが、今回のアンダラは、アンコールを除いて各公演ともセトリがほぼ一緒だったということもあり、1本の記事で感想をまとめることにします。

今回のアンダーライブに参加するメンバーは、アンダラ史最少人数を更新する10人。さらに、北海道の公演で北川悠理ちゃんが負傷するというアクシデントがあり、私が現地参戦した名古屋・大阪はさらに1人少ない9人でのパフォーマンスとなった(悠理ちゃんはその後12月12日のFINALで復帰)。

9人といえば12月16日までのエビ中と同じ人数であり、もはや乃木坂スタイルを逸脱していると言えるほどの少人数だが、結果として、その人数の少なさが「個」の力をこれまで以上に強く輝かせるのを目の当たりにすることとなった。


その筆頭が、今シングルのアンダーセンターでありツアーにおいては座長を務めた中村麗乃ちゃんだった。

かねてから歌唱力には定評があった麗乃ちゃんだが、今回のアンダラではまさに無双状態。冒頭の『アンダー』のアカペラソロから本編最後の『悪い成分』まで、終始圧巻の歌唱力を見せつけてくれたけど、その中でも特に良かったと思ったのが『いつかできるから今日できる』の1Aだった。

各メンバーが1フレーズずつソロで歌いつなぎ、Aメロ最後を麗乃ちゃんが歌う、という歌割りだったのだけど、この曲のAメロは簡単そうに見えてめちゃくちゃ難しく、他のメンバーが音程やリズムに気を使いながら、というのが感じられたのに対し麗乃ちゃんだけが完全に壁の向こう側にいた。

『悪い成分』で印象に残ったのは2Bのソロ。FINALの神奈川公演では感極まって声が上ずりかけていたのだけどそれをぎりぎりのところで制御し、感情の高まりをうまく歌声に乗せて、表現力の武器として使っていたのに震えが走った。この2Bが今後基本的にライブではカットされることになるのが本当に惜しい。

ツアーを通じて、今の麗乃ちゃんは「これが…力か…!」状態(笑)にいるように見えた。ひたすら努力してたらいつの間にか身に付いていた自分の「歌力(うたぢから)」を思うがままに出すのが楽しくてしょうがない、みたいな。もちろんそれでいい。そういう麗乃ちゃんをもっともっと見たい。


矢久保美緒ちゃんも、今回突き抜けてきた一人だった。『4番目の光』の大サビ〈もし雨が降ってぬかるんでも〉で「ああ、この子は何かを見つけたんだな」と感じて涙が出てしまった。 アイドルの多様性をよく知るみっちゃんが、その中で自分の花の咲かせ方を見つけたんだとすれば、こんなにうれしいことは無い。

MCパートで「これまではがむちゃらにやるしか術を知らなかったけど、今回は自分らしさ、自分なりのこだわりを追求できるようになった」という意味のことを言っていたけど、本当にそうなんだろうなと思えるようなパフォーマンスだった。


個人的にアンダーで一番注目している黒見明香ちゃん。トークの面白さはもはや鉄板だし、パフォーマンスにおいても目力を活かした表情づくりの上手さはもはやアンダーファンなら誰でも知ってるところだけど、歌も良いんですよ彼女は、ということを声を大にして言いたい。

技術とか細かいことは抜きにして、その「声を出すことを恐れない姿勢」は最少時9人という人数で歌わなければならなかった今回のアンダーメンバーたち大いに勇気づけてくれる存在だったんじゃないだろうか。黒見ちゃんが入る歌割りのところは、誰と合わせてもビシっと芯が通る感じがした。


北川悠理ちゃん、普段のおっとりした佇まいからはちょっと想像できないぐらい歌が「強い」ことは知ってたけど、今回はビジュアル面がなんというか、垢抜けたなぁと感じた(B.O.L.Tの高井千帆さんに似てきたなぁなんて思ってしまった)。たぶんその理由は目に宿った自信だろうか。

今回の、全メンバー揃っても10人という少人数のアンダラでは、悠理ちゃんに限らず全員が「私を見て!私の歌を聴いて!」という自信に満ちていたように見えた。そのことがビジュアル面に一番大きく作用していたのが悠理ちゃんだったのかもしれない。


佐藤璃果ちゃん、今回はダンサーとしての活躍が印象に残った。特にovertureをアレンジしたダンストラックで、ソロダンスリレーの最後に登場してセンターでバキバキに踊っていた姿が忘れられそうにない。もちろん『マシンガンレイン』も最高。あのベビーフェイスでバキバキダンスのギャップ、実に良さみが深い。


伊藤理々杏ちゃん、30thアンダラではスケジュールの都合で最終日のみの登場だった(これはこれでヒーロー感が半端なくて良かった)けど、今回は全公演フル出場で暴れまわってくれた。『コウモリよ』みたいな曲が本当に似合うアンダーのエース。最終日の配信でアンコールの『ごめんねFingersCrossed』(センター麗乃ちゃん、裏センターりりあ)では思わず「りりれの!!!」と(配信を見ているモニターの前で)叫んだよね。


松尾美佑ちゃん、早くも『錆びたコンパス』のセンターが板についていて、この曲がれなち卒業後もこうして生きているのは美佑ちゃんのおかげと感謝しか無い。余談だけど、〈Break a leg!〉の"leg"のところで手を突き上げる振りコピが好きで、30thアンダラの時から個人的にやっているのだけど、大阪のとき隣にいた人が同じことをやってくれてて嬉しかった。あのとき下手側最後列にいた方、ありがとう。

美佑ちゃんといえば、大阪DAY2での所信表明スピーチで「自分の中でライブが、与えられるものから作り上げていくものになった」と言っていたのが印象に残っている。悠理ちゃんと林瑠奈ちゃんのラップもそうだけど、メンバーには自分自身の創造性をライブという場にどんどん投射していってほしいし、そういう文化が乃木坂の中に根付いていってほしいと切に願う。


吉田綾乃クリスティーちゃん、彼女も今やアンダーの歌に無くてはならない存在だし、MCパートやクリスマスコーナーみたいなところではアンダラ特有の張り詰めた糸のような雰囲気をほぐしてくれる癒やし。


向井葉月ちゃんはますますきれいになって、でも加入当初からのひたむきさとか守ってあげたくなる感じとかは変わらず、そんな彼女の魅力に惹かれた黄×黄のペンラがフロアにたくさん灯ってるのを見るとなんかこちらまで優しい気持ちになる。


佐藤楓ちゃん。30thで選抜入りしたものの31stでは再びアンダーということで、いろいろ思うところはあるに違いないけど、アンダーファンとしては「アンダーに必要とされた」ということだと思いたい。『全部夢のまま』を改めて「あぁ、いい曲だな」と思うことができたのはでんちゃんのおかげです。


セトリにも触れておきたい。

オープニングを飾った『アンダー』は、名曲ではあるがなかなかに業の深い歌でもある。そもそもこれが出来た頃にはすでに乃木坂アンダーは武道館ライブを成功させた後で、そういう時期にわざわざ「あなたの人生はどこにあるの?」だの「当たっていないスポットライト」なんて歌詞を盛り込んだ歌を作るのも底意地が悪い(どれほどのアイドルが武道館を見果てぬ夢として仰いでいるか…)と、ひねくれた私は思ってしまうのだが、それはそれとして、「努力する姿」を自らの魅力として発信するアイドルという職能の尊さと苦悩を表現する歌として見ればこれほど強い「アイドルソング」もなかなか無いわけで。オケを最低限に抑えたアレンジバージョンで、今のアンダーの歌唱表現力を見せつけ、めくるめくアンダーライブの世界へ聴衆を引き込むにも格好のオープニングナンバーであった。


今回は初めての、3期生・4期生のみによるアンダーライブとなった。その決意の表明として、冒頭のブロックで『三番目の風』『4番目の光』が披露された(いずれも期生ごとではなく、出演メンバー全員でのパフォーマンス)。期生曲がアンダラで披露されるというのは結構異例のことで、三風のイントロがかかった瞬間どの会場でもどよめきが起きたのを覚えている。

単純に楽曲としても乃木坂屈指の作品だし、それぞれ向井葉月ちゃんと矢久保美緒ちゃんという、これまでアンダー一筋(取りようによっては皮肉と思われるかもしれない表現だが、アンダーファンである私にとっては純粋な感謝の言葉だ)で頑張ってきたメンバーがセンターを務めたことに、早くも感涙を禁じ得なかった。


ユニットコーナーでは『満月が消えた』(北川悠理ちゃん、松尾美佑ちゃん、佐藤楓ちゃん)が印象的、というかこの曲、アルバムのみの収録曲ということもありこれまでほとんどスルーしていた。ソリッドでコンテンポラリー寄りなダンスナンバー、『頬杖をついては眠れない』と並ぶ、乃木坂46としては「奇曲」。再発見させてくれてありがとうの気持ちだ。

沈金でさんざんネタにされた『コウモリよ』(伊藤理々杏ちゃん、向井葉月ちゃん、黒見明香ちゃん、矢久保美緒ちゃん)も、現場で見るとめちゃくちゃ上がるしサビは全力振りコピしたくなる(スペースが無くて無理だったけど)。りりあのシャウトには全人類が痺れたに違いない。


12月のツアーということで中間部に挟まれた「クリスマスコーナー」は、緊迫感高めの曲が揃った今回のアンダラにおいていい感じに心をほぐしてくれるコーナーだった。コーナーのトリを飾った『全部 夢のまま』は、最初は「Earth Wind and Fireオマージュか」ぐらいにしか思ってなかったのだけど繰り返し聴くうちに「いい曲だなぁ」ってなっていき、今回のアンダラではすこしの切なさを伴って幸せな夜を彩ってくれた。


そしていよいよラストブロック。『マシンガンレイン』『届かなくたって…』『錆びたコンパス』『日常』。こうして曲名をキーボードで打っているだけでもゾワゾワした感覚が蘇る。これほどの楽曲と、その楽曲の力を120%引き出すパフォーマンス能力を蓄えた乃木坂アンダーは、もっと世に知られるべき存在だと思うのは私だけではないはずだ。

新曲『悪い成分』を、青×白のペンライトで一杯になったフロアに放ち終えると、盛大な拍手とともにメンバーが一旦ステージから見送られた。

アンコールは、公演によって曲が変えられたのだが、私が現地で見た公演はいずれも『ジコチューでいこう!』『帰り道は遠回りしたくなる』『おいでシャンプー』の3曲だった。配信で見た最終日は『好きというのはロックだぜ!』『ごめんねFingersCrossed』『おいでシャンプー』、そして最後に『乃木坂の詩』。なので「りりれのごめフィン」は私にとってサプライズで、ある意味一番飛び上がったレパートリーだったかもしれない。


かつて12人でのアンダラが「史上最弱」などというキャッチコピーを与えられたことがあったが、今や10人だろうが9人だろうがそんなことは誰も気にしない。「今回も『最高』を更新してくれるはず」という確信を持って、オタクたちはZeppに集ったに違いない。その道筋を付けたのは、今なお伝説と呼ばれる29thアンダラだったように思う。

たとえそこに推しはいなくても、ライブとして、エンタテインメントとして、「最高」がそこにあると信じるから、また次も私はアンダラに足を運ぶ。

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