人間と合成音声ソフトが一緒に歌うデュエットソング
ボカロ曲を聴いてると、たま~に人間のコーラスが入っていることがあります。普段は特に気にならないのですが、それが「vocaloidだけの歌世界」に浸っていたい時だったりすると、異物が入り込んできたようで不快な気分になってしまうこともしばしば。特に合成音声がたどたどしい調声で一生懸命歌っている時に、プロ歌手の様な上手い歌やコーラスが入って来た日にはその温度差に胸が苦しくなってしまったり。でも中には人とボカロが混ざっていても違和感のない、むしろそれが良いと感じる楽曲に出会えることもあります。人と合成音声、どちらか一方が主役になるのではなく、二つの同等な存在が楽曲の魅力を底上げしているような。ここではそんな初音ミクと人(ボカロP)がデュエットしたナンバーの傑作を、いくつか紹介してみたいと思います。
藤宮圭 【初音ミクとデュエット】Overture ~サーカス~【オリジナル】
バンド Cross AddictionやゲームBGMの作曲等を手掛ける藤宮圭さんのボカロ処女作。アコギやアコーディオン、パーカッションの音色が跳ねた軽快なワルツです。ミクとのユニゾンから途中メインをミクに譲って藤宮さんがコーラスに徹するところが素晴らしい。御本人のイイ声にも鳥肌立ちます。2010年作。「藤宮圭」タグで最近の曲も辿れます。
ジンジャー 【初音ミクと一緒に歌ってみた】カサブタ【オリジナル曲】
ニコ動でゲームBGMのメドレーや物理演算ソフトによるピタゴラスイッチ系動画を投稿していたジンジャーさん。ボカロオリジナル4作目はジャジーなピアノポップ、ミクとP本人のデュエットソングです。ミクとジンジャーさんは常にユニゾン状態でコーラスは御本人。当時はここまでミクの声と馴染んだ歌声を聴いたことが無かったため、ボカロにはこういう方向性もあるのかと新たな可能性を感じた一曲でした。これはジンジャーさん自身の声質も関係あるのでしょうね。2008年作。
PSGO-Z 【初音ミクAppend】雲のない帰り道【オリジナル】
PSGO-Zさんのボカロオリジナル4作目、風味堂を思わせる軽快なピアノポップをミクとユニゾンしています。しかしこの垢抜けた音作り!!この曲を聴いて良いな、と思った人はボーカルと一緒に歌ってるのがソフトかどうかなんて気にしたりはしないでしょう。御本人の歌声がミクの声とこの上なく馴染んでいて魅力的な一曲です。2011年作。
OSTER_project - 【クレモンティーヌ×初音ミク】魔法使いのショコラティエ
伊勢丹のイベント用に制作された一曲。思わず口笛をハミングしたくなるようなポップなボサノバソングを、クレモンティーヌさんとミクさんが楽しそうにデュエットしています。楽器が打ち込みではなく生音なOSTERさんの楽曲というのも聴きどころ。孫と歌ってる感ありますね(音の高さ的に)。2012年作。
さつき が てんこもり - ミクと自分の声だけで、短い曲を作ってみた
DJやプロデューサー等、商業から同人まで幅広い音楽活動を行っているさつき が てんこもりさんがヒューマンビートボックスと化した「ミク以外全部俺」のポップソング。短い曲ながらそのマルチアーティストぶりを遺憾なく発揮されています。2014年作。
シンガーソングライターねこむらさんと詩人ねこみさんのポップユニット、cat_napによるR&Bナンバー。ねこむらさんとミクがデュエットしています。最初の方はcat_napの曲をミクに歌ってもらっていた感じでしたが、コーラスをご本人が担当していたりと常にボカロの影に「人」を感じさせる音作りでした。そして今回は人とボカロの割合が5:5、かなりいい塩梅で人とボーカルソフトが絡んだ感じになっています。自然に体が揺れるゆるやかBPMにラップが映える一曲です。
"ボカロの歌声は好きだけど人の歌声は苦手"とか"ボカロの歌声は嫌い。歌ってみたが好き"などボカロファンの間にさえ相容れない確執が生まれていたりと、ボーカロイドムーブメントも来るところまで来たなという感じですが、そういう状況下でこういうボカロと人とのデュエットがもっと受け入れられて、互いのボーダーの橋渡しになってくれるといいなと思います。
自分のブログで書いてた記事の再編集版です。