篠田真

篠田真です。短歌や詩、エッセイを書きます。

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最近の記事

煩い音楽を聴かないとダメだった

 私は華やかさとは縁遠い高校生だった。  朝とは言い難い時間に、湿った砂が詰まった体を引きずり起こす。吐き気とともに薬を飲み込み、もたもたと制服を着る。椅子でしばらくぼーっとしたあと、なんとか高校生の形を取り繕って家を出るのがいつもの流れだった。  バス停でバスを待つ時間が果てしなく長く感じた。だからウォークマンのスイッチを入れてイヤホンをつける。早く、早く音楽を聴かなくては。後ろ向きの気持ちを燃やして暴力的なエネルギーを得るために、とびっきりのロックンロールがいる。煩くて速

    • 認めない

       自律神経失調症。起立性調節障害。身体表現性障害。気分変調症。この8年間で私の体は様々な症状を吐き出し、そのつど姿を変えていった。  最も苦しかったのは高校時代だ。午前中は布団から起きられず、叩いても揺すっても目が覚めない。昼ごろにやっと起きられるようになるが、頭の痛みとだるさで酷い有様だった。そんな調子だから休みばかりが増えていく。単位が取れなくて留年する。結局私は高校を卒業できなかった。そんな話をしたとき、ある人にこう言われた。  「その病気ならしかたないよ」  しかた

      • アンカル『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』を観た

        7月5日、池袋・東京芸術劇場にてアンカル『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』を観た。 数日前からTwitterやInstagramでタイトルを見かけていた。その時はあまり気に留めていなかったが、チケットサイトで違う劇団の舞台チケットを買った際にサジェストされて、これが演劇公演であるということを知った。なんとなく観てみたい、観なくてはという気持ちになりチケットを購入し、翌日に観た。 公式サイトより: 中学校のあるクラスの生徒24人と大人3人の物語である。 体育館のよう

        • 置いていかないで

           高校3年生の3月。卒業式が終わり、緊張から解放されて晴れやかな表情を浮かべた皆が体育館を後にする。寒い冬が終わりを告げ、暖かな季節の到来を予感させるこの日、私はそれを外から見ることしかできなかった。  心身を崩して欠時数がかさみ卒業できなくなった私に、卒業式の席はなかった。それでも前日の予行練習には参加し、担任の厚意で呼名をしてもらう。どこか緩んだ空気の中、名前を呼ばれて涙が溢れそうになり慌てて堪えた。私を見る担任団の視線がまるで憐れむようで辛くなる。これが私の卒業式。明日

        煩い音楽を聴かないとダメだった