東京高裁は強姦致傷を捏造? :伊藤詩織訴訟と司法の闇

自称レイプ被害者の伊藤詩織さんが、山口敬之さんを訴えていた訴訟で東京高裁は一審に続いて詩織さんに有利な判決を出しました。
判決では、詩織さんの主張は2015年当時から一貫していると認定しました。
「Black Box」に書いてある早朝5時の強姦致傷があったということです。

a. 詩織さんが意識を取り戻したらレイプされている最中だった
b. トイレに逃げ込んで鏡を見たら、体中に傷とアザがつけられていた
c. トイレから無理やり引きずり出されてベッドに連れ戻された
d. 『抵抗できないほどの強い力で』ベッドに押し付けられた
e. 強引に脚をこじ開けようとされたために膝を負傷した

これがあったというわけです。実際、判決では詩織さんが負ったと称している右膝のケガについての肉体的・精神的苦痛を慰謝料の中に算入しています(判決文P73-74)。

しかし、ですよ。上記の事実を詩織さんが2015年4月に高輪署に申告していたなら、なぜ強姦致傷罪として処理されなかったのでしょうか。
詩織さんは高輪署に告訴状を提出する1週間前に弁護士に相談していますが、ここでも強姦致傷ではなくて準強姦としての忠告をもらっています(「Black Box」P89)。
「Black Box」を読めば分かりますが、高輪署の捜査員との会話でも強姦致傷どころかケガについての話題さえありません。
そもそも今現在、詩織さんも弁護士たちも警察がこの事件を強姦致傷罪として捜査しなかったことについて何の苦情も申し立てていません。
国内外のメディアのインタビューでも言及していません。

「Black Box」P51の強姦致傷の描写は致命的失敗
紅而note
2020年7月4日
https://note.com/774weco/n/nb7ee59bf7ecf
詩織さんが怒った「処女ですか?」質問の真意は強姦致傷にあり
紅而note
2021年3月21日
https://note.com/774weco/n/n0aa45b4f56fa
清水潔が、詩織さんから「準強姦」について相談された旨をラジオで発言
紅而note
2021年3月27日
https://note.com/774weco/n/ne070220ea929
紅而note
2020年11月28日 09:06
BBC「Japan's Secret Shame」は詩織さんの強姦致傷を消去
https://note.com/774weco/n/n57c0c9bd44d6

詩織さんは当初は準強姦のみを警察に申告していたと考えれば、疑問は氷解するのです。
すなわち、東京高裁判決はありもしない強姦致傷を捏造したわけです。

     *     *     *

これまで何度も繰り返して訴えたことですが、産婦人科のカルテと並んで、「存在しなかった強姦致傷」こそがこの事件の闇を解明する鍵なのです。
逆に言えば、これが理解できていないと、伊藤詩織事件の異常さが今ひとつ理解できなくなります。
以下、改正前の刑法を前提に説明します。

刑法177条の強姦罪とは暴行・脅迫を手段として女性を姦淫することです。(未遂は179条)
178条の準強姦罪とは女性を心神喪失・抗拒不能状態にして(あるいは、この状態にあることを利用して)姦淫することです。
181条の強姦致傷罪とは強姦を試みる際にケガをさせることです。強姦が未遂であっても成立します。非親告罪であり、重罪です。判例ではケガの程度が軽くても強姦致傷罪を認めています。

「Black Box」に描写されている強姦致傷の被害についてもう一度整理しましょう。(前述のbも準強姦致傷の疑いが濃厚ですが、論点を単純化するために省略します)

c. トイレから無理やり引きずり出されてベッドに連れ戻された
d. 『抵抗できないほどの強い力で』ベッドに押し付けられた
e. 強引に脚をこじ開けようとされたために膝を負傷した

下図に赤丸で示しましたが、これは強姦致傷罪に該当します。
強姦罪の実行行為である暴行(=反抗を著しく困難にする程度の有形力の行使)はcないしはdの段階で開始されたと考えられます。

画像1

詩織サポーターの言う、「整形外科のカルテにあった受傷日が事件前になっていたので詩織さんの強姦致傷の訴えに警察は取り合わなかった」説を採用したとしても、強姦罪の実行行為の着手は認められるので、強姦未遂罪を問うことはできます。
(そもそも、cからeのような激しい暴行を受けたのなら膝以外にもケガを負ったでしょう)

画像2

強姦罪はひとまず忘れて、ケガのみに焦点を当てたら傷害罪(204条)にも該当します。

画像3

当然のことながら暴行罪(208条)にも引っかかります。暴行罪における「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使ですから。

画像4

何が言いたいかというと、「Black Box」に書かれた内容(c〜e)を詩織さんが2015年に申告していたなら、捜査員・検事・弁護士は強姦致傷罪・強姦未遂罪・傷害罪・暴行罪のうちどれが成立するかを検討したはずです。

     *     *     *

「Black Box」の内容がいかに異常かを分かりやすくするために、強姦罪と強姦致傷罪の関係を暴行罪と傷害罪の関係に置き換えてみましょう。

上司の山田が部下の伊東を誰もいない会議室で説教していた。伊東の態度の悪さに業を煮やした山田は灰皿を投げつけた。灰皿は伊東の肩に当たったがケガはしなかった。(暴行罪に該当)
説教はさらに続いたが、伊東が反抗的な目つきで睨んできたので山田は激昂して椅子を投げつけた。今度は伊東は頭にケガをして(傷害罪に該当)、病院で診断書を書いてもらった。

この事例で、伊東が警察に被害を相談したのに、捜査員が暴行罪しか問題にしなかったとしたらおかしいでしょう。
「う〜ん。目撃者がいないので、アナタの供述だけで暴行罪として立件するのは難しいですね」と捜査員がほざいたとしたら、無能以外の何ものでもありません。
さらに、なぜかケガについて全く言及しない捜査員に対して、伊東も彼の弁護士も何の文句も言わなかったとしたら、もっと変です。

詩織さんと彼女の弁護士たちの態度はまさにこれです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?