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【超短小説】体重計【1000文字以下】

最悪だ。3キロも太っている。まぁ彼氏に振られてから暴飲暴食を繰り返していたのだからしょうがない。

いっておくけど、別れた悲しさを埋めるために私の胃を満足させていた訳ではなく、もともと私という人間はがさつで、自由に好きなことをして、好きなものを好きなだけ食べる。つまり通常運転に戻っただけ。

だから、最悪だと思ったのも彼氏に刷り込まれた一種のトラウマのようなもののせいであり、良い彼女でいようと偽っていた自分がまた顔をだした感情だ。

もう理想を演じなくていいと思えば、3キロ太ることなんてとてもちっぽけで、私の人生の中ではどうでもいいことのはずだった。

そんなことを思うとまたあいつのことを思い出し、むかついてくる。

私は理想の彼女になろうとしていたのに。

でも、それはあいつのことをほんとの意味では見ていなかったことに気づいた。
私は彼のことが好きだという素直な気持ちよりも、自分勝手な理想の彼女を造り上げ、演じることで彼は満足していると思ってた。

結局は私一人で恋愛をしている気になっていた。

別れを切り出された私は、それでもまだ演じていた。素直に泣いて、吐き出して、納得すればよかったのに。

別れの理由は聞かなかった。

また、むかついてきた。こんな私自身に。

次の恋愛にむけてがんばろうとかっていうのは、きっと私らしくはない。

自由に好きなことができて、好きなものを好きなだけた食べることができる。今はそれでいい。

また次がきたとき、そのときは体重計に表示された数字のように、そのままの私を見せたい。

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