結婚式の招待状なんていらない　

「お前ら夫婦みたいやなぁ。」

忘れもしない、中2の国語の授業中。グループでディスカッションをするような授業内容で、私と彼のやり取りを見ていた同級生がそう言った。

「そんな訳ない！」と慌てて訂正するも心の中では飛び上がりたくなるくらい嬉しかったのだ。

彼はスポーツ万能で野球部のエースだった。勉強も出来たし、友達も多い。顔もカッコいいし。
だけど、私が好きになったのは話していて楽しかったから。とにかく楽しくて笑ってた。そして、飾らない自分でいれた。向こうもそうだったのだろう。それが同級生からしたら「夫婦みたい」という感想に至ったのだろう。

私は中学時代の大半、彼の事が好きだった。
遠足や修学旅行同じ班だと嬉しかった。毎月の席替え、隣になれますようにとクジを引いていた。

高校の時も。クラスは別々で、全く喋れなかったがずっと好きだった。違う子と付き合ったりもしたがw

ある日、野球部のマネージャーと付きあってるのを知った。
その女の子に「一緒にいる所を目撃されたのはニコルが第一号😆あの日から付き合った😁」と聞いてもいないのに言われた時はショックで、こんなにも不名誉なことがあるのかと落ち込んだ。


そして、成人式で再会してグループで遊ぶようにもなった。きっと彼は私の気持ちに薄々気付いていただろう。そして私も「もしかしたら彼は私の事が好きかもしれない」と感じていた。でも関係は進まなかったのだ。


「もし違ったら？このまま仲の良い関係が崩れるかも。それに今更好きって言って引かれるかも」という感情があった。それはきっと彼も一緒だ。

私が帰省する時は連絡を取り遊んだ。その他大勢もいたが。


でもそれだけ。


2人きりでいい雰囲気になる事も、2人きりで会うこともなかった。出来る限りのアピールはしたが、伝わらなかったし告白する勇気は無かった。
とにかく私は自分に自信が無い人間だったのだ。

そんな中、バイト仲間だった夫と付き合いだし、結婚した。

そして結婚してからは心の中に「いい思い出」として彼がいた。

仲間内で飲んだりする事もあった。たまに電話がかかってくることもあったが、他にも女友達に電話しているみたいだし、彼にとって特別な事ではない。


彼が東京勤務になった。
しばらくして、私は安室ちゃんのライブで1人で東京に行くことになった。そこで彼に連絡をした。


東京に行くから会えない？、と。

結婚していて、異性と2人きりで遊ぶのは浮気！と思う方もいるだろう。気分を害したら申し訳ない。


たった1度、2人きりで遊んで思い出にしようと思った。しかも東京。誰の目を気にする必要もない。
これが地元だったら何を言われるか分からないが。

もちろん健全に遊ぶ以上のことは求めていない。
まぁ、そんな事起こるはずもないし、手を繋ぐような事すら1000%ないと断言出来た。
20代前半、お互いフリーのときにすら何もなかったのだ。今更あるはずがない。

当日は築地で食べ歩きをした。何を食べたかも覚えてる。たまご焼き、大きな焼売、2巻で500円のまぐろのお寿司、お店に入ってカウンターでお寿司と鯵のたたきを食べた。彼はビール。私はコーラを頼んだ。暑い日だったので炭酸がおいしかった。


その後東京タワーに登った。2人で会話をしながら景色を見て、お土産を買った。東京タワー型の容器に入ったお菓子。私はマーブルチョコで彼は金平糖を選んだ。「これ可愛い」と私が手に取った小銭入れを「お！可愛いやん！」と言ってくれ、積極的にお土産を選ぶ彼が意外だった。

お酒も飲むのに甘党なことを知った。
汗かきで、食べても太らないタイプ。
彼女とデートする時は相手に色々提案して欲しいそうだ。
「だから今日は行きたいところを言ってくれて助かった」と。
(あー私達付き合ってたらあっていたんだろうな)と感じた。色々知れた。


もう遅いけど。


浅草に寄って、私の飛行機の時間があったから地下鉄をダッシュで乗り換えた。乗り換えアプリで色々調べてくれた。2人で並んで地下鉄に乗ってるのが変だった。

そして品川駅で別れた。

それだけ。

しかもムードも何もない。お互い息を切らしながら

「じゃーね！休みなのにありがと！楽しかった！」
「おぅ！俺も！気を付けてな！またな」

と、バタバタと別れた。

それだけだけど、少し遅れてきた青春。とても楽しかった。この思い出で、長年の片想いに蓋が出来ると思った。とてもいい思い出。
そして、彼はやっぱり友達なんだ。

「お前、いい女になったよなぁ」と言われた。
嬉しかった。けどそれ以上に切なかった。
それ、10年前に言って欲しかったよ。

それからはたまにLINEをする程度。ここ1年は連絡も取ってなかった。うん、それでいい。

無理に忘れようとしていたわけではない。本当に思い出になっていた。

だけど、先日電話がかかってきた。
休み前の夜。あぁ、飲んでるなと思った。

続く。