ぱりっと音がしたのはここ最近のこと。 大事に守っていたガラス細工に 誰かの人差し指が少し触れただけ。 しかし 綺麗な色とりどりの光を反射していたガラス細工は たちまち歪んだ光を乱反射した とても美しかったが、今はいろんな色の光が混ざり合い、 美しいとは言い難い 私はそれを毎日眺めている 無理に直そうと焦らず、 時が過ぎるのを待ち、 前もこんなことあったよなと なんだか冷静に思い出している そのガラス細工は周りから見れば 本当にいろんな色の光が反射していて 息を飲むほど美しい
涙が枕にぽとりと落ちて じゅわぁと広がりシミとなった そこから歯止めがきかなくなり 次から次へとシミをつくる 高校生は子供でも大人でもない 高校生でアルバイトする人がいて 社会の厳しさ、お金を稼ぐことの大変さを 学んでいる 高校生で部活に精を出す人がいて 仲間で絆を深めたり、汗水垂らして懸命に 練習に打ち込んでいる 私には何も無い 笑い合える友達も数少ない 勉強もできない 漠然とした、今のままじゃ届きそうもない 大学受験という壁があって どうにかなるという六文字でその大きな壁
僕が君を意識し始めたのは、去年の六月、夏の服に着替えた頃。僕は、よく隣町の図書館に本を借りに行っていた。しゃんとした背筋、手入れのいいロングヘアを高くポニーテールにした君を覚えていたのは、一度本の争奪戦に敗れたからだ。好きな作家の新刊がたまたま棚に戻っていた。まだ発売してから一カ月ほどなのでこれは相当運のいいことである。迷わず手を伸ばしたところ、さっと横からかっさらわれた。負けに思わずむっとしてかっさらった本人を見ると、同じ中学の制服を着た女子だった。 僕より背が高くて
ペダルをゆっくり踏み込むと生温い風が私の体に沿うようにブラウスと肌の間から抜けていった。 あたしさ、竹中君と付き合うことになったんだ、 頬を寄せてはにかみながら報告してきたサヤカに 私は乾いた笑顔を無理矢理つくり、 お似合いじゃん、おめでとう、 考えずに口から溢れ出すコトバを自分に言い聞かせた。 夏も終わり、ぎこちない掛け声が交差する校庭を横目に私は駅へと再びペダルをゆっくりと大きく踏み込んだ。流れ行く景色が夕日に飲み込まれていく。最寄りの駅に着いた頃には辺りは闇に包まれて