犬が飛ぶとき

わたしが病気になった時、お母さんがお仕事を休んで病院に連れて行ってくれて、診察が終わってお家に帰ってからも、干したてタオルをわたしのために敷いて、電気で温めていてくれて、背中に掛けてくれたふわふわのブランケットはやさしくて、やれごはんは食べているか、シーツは汚れていないか、様子を見に来ては頭を撫でてくれるのです。ずっとこうだったらいいのにな、明日も仕事休んでくれないかな、ずっとずっとお家にいてほしいな。しあわせの足音を聴いて、うつらうつらしていたら、いつしか羽音が聞こえて、なんで家に水鳥がいるのかと思ったら、身体が軽いことに気がついて,目をあけると見たことのない風景が目下に広がっていて、左右に白い羽根が動いてる。羽根が生えて空を飛んでいたのです。
お母さんは?わたし、これから何処にいくの?意思とは無関係に羽ばたき続ける体が怖くなって犬は泣きました。どうにもならないのでした。

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