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バービーの憂鬱

※創作です。

バービーは肉体的にはもうすぐ50歳なる女だ。

人工的なおっぱいと鍛えた肉体、それからまあまあの回数の整形手術のおかげで、年齢よりは随分若く見えた。

バービーは若く見えようが何だろうがどうでも良かった。バービーはバービーらしくプラスチックのお人形になりたいのだ。

バービーはポルノに出てお金を稼いだ、若い頃からずっと裸になってお金を稼いだ。幸いなことに人工的な改造を加える前から彼女はそれなりに需要のある容姿だったのだ。

バービーがバービーでなかったころ、空からは爆弾が降り、地面は爆発し、食べ物はなかった。

彼女の産まれた国はとうに存在しない。

彼女はピッタリしたピンクのジャージを着る、部屋のほとんどがピンクで埋め尽くされている、彼女はピンクが大好きだった。やや艶を失ったブロンドも毛先はピンクに染めてある。

まだ彼女の裸やセックスを見たい人間がいるおかげで、彼女は不自由なく生活が出来る。幸せなことだ。

バービーは裸になることもセックスすることも得意だった、見る人がどうやったら楽しめるのか、本能的に解った。しかし、好きかと言われれば分からない。ただのお金を稼ぐ手段のように思えた。それ以上でもそれ以下でもない。

可愛いためなら死んでもいい。彼女は常にそう思っていた。可愛いものが大好きなのだ、身の回りいっさいがっさい、可愛くあるようにした。ピンクのカーテン、バラの香水、80年代の家具、ピンクのキャデラック、猫足のバスタブ、孔雀の扇子、おびただしいお人形達、時間ともにそれらは完璧に近づき、今や彼女の王国である。

そう、バービーはプラスチックの王様だった。彼女の王国には彼女しかいないのだから「女」である必要はない。

インターネットが発達するにつれ(もちろん彼女はポルノを載せた)、彼女は時折「攻撃」された。

悪趣味

男に媚びを売っている

醜い

年を考えろ

男社会の犠牲者

いくら?

綺麗ですね

連絡下さい

愛してる

この国から出ていけよ

淫乱

バービーは傷つかなかった。幼いころに見た、死と硫黄、飢え、暴力、に比べればちゃんちゃらおかしいのであった。しかし金にならないことは嫌いだったので憂鬱ではあった。

ピンクのマニキュアを塗りながらバービーは考える、私はセックスが得意でお金を稼いだ、それだけのことじゃない、なんで皆そんなに大げさに言うのかしら?、やれることをやって好きなもの買って生きてるだけよ。

バービーはマニキュアが乾いたら、大好きなスイカズラの香りのオイルを塗って、ピンクのサテンのベッドで眠る。

大好きなものに囲まれて安らかな寝息をたてるバービーは無垢である。

おやすみ王様、良い夢を、心のないプラスチックのお友達は皆彼女に囁く。




バツイチ年増へのサポートっていやらしい響きですよね。それが言いたかっただけです。