映画『パリ13区』まずセックス、そして・・・。愛を漂うパリの移民たち

台湾系フランス人エミール(ルーシー・チャン)とアフリカ系フランス人カミーユ(マキタ・サンバ)、アジア系の女とアフリカ系黒人男が主役になっているところが、現代のフランス映画らしい。白黒画面で、移民が多く暮らすパリ13区の高層マンションやビル群の夜の明かりが美しい。前半はやたらとセックスばかりしている。コールセンターで働くエミールは、まずはセックスしてみるというタイプの女の子。ルームメイトになった高校教師のカミーユとセックスをする仲にすぐなるが、それ以上の関係にはならない。カミーユは、同じ黒人女ステファニーを部屋に連れ込むようになり、エミールとの関係が気まずくなっていく。そしてカミーユは、部屋を出て行ってしまう。

もう一人の登場人物である白人女ノラ(ノエミ・メルラン)は、30歳を過ぎてソルボンヌ大学に復学したが、歳の若い同級生たちと馴染めずにいた。あるパーティーで金髪のウィッグをかぶり参加したノラは、自分とそっくりのポルノスターと間違われて、同級生たちのからかいの標的にされてしまう。大学から離れ、不動産会社で働くことにしたノラは、同じく教師を辞めて友人の不動産会社を手伝うカミーユと知り合う。ステファニーにフラれ、ノラに惹かれていくカミーユ。二人はセックスをする関係になるのだが、ノラが抱えている的問題から二人の関係もうまくいかない。ノラは、自分とそっくりで間違えられたポルノスターのアンバー・スウィート(ジェニー・ベス)とWEBで会話をするようになり、二人は次第に惹かれあっていく。

この映画の脚本に『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマが参加しており、このノラとアンバー・スウィートの女同士のドラマは、明らかに『燃ゆる女の肖像』『秘密の森の、その向こう』と同じであり、シアマがつくったドラマだろう。孤独でトラウマを抱えているような二人の女性が、お互いを一心同体の分身のように感じ、惹かれ合っていく物語。おまけに『燃ゆる女の肖像』と同じノエミ・メルランが出ているのだ。

性を中心に現代のパリの男女の関係を描きながら、本当に惹かれ合うパートナーとのを見つけていく物語・・・と言ってしまえばそれだけだが、アジア人女優のルーシー・チャンは魅力的に描かれている。カフェのウェイトレスをやりながら、マッチングアプリで男と会い、カフェでバレエダンスを踊る場面はなかなかいい。カンヌでパルムドールを獲った『ディーパンの闘い』や『預言者』などは未見だが、ジャック・オディアール監督作品も見てみないといけない。


2021年製作/105分/R18+/フランス
原題:Les Olympiades
配給:ロングライド
監督:ジャック・オーディアール
製作:バレリー・シェアマン
原作:エイドリアン・トミネ
脚本:ジャック・オーディアール、セリーヌ・シアマ、 レア・ミシウス
撮影:ポール・ギローム
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ローン
キャスト:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス、カミーユ・レオン=フュシアン、オセアーヌ・カイラティ、アナイド・ロザム、ポル・ホワイト、ジュヌビエーブ・ドアング

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