ストイックなクリント・イーストウッドの脱獄映画『アルカトラズからの脱出』

まだ誰も脱走に成功したことのないアルカドラズ島の厳重な警備体制を誇る刑務所に、これまで何度も刑務所から脱走してきた男、フランク・モーリス(クリント・イーストウッド)が送り込まれる。その海に囲まれた刑務所から男が脱走するまでの物語。

『大脱走』のような派手なアクションはない。『パピヨン』というスティーヴ・マックィーンの脱獄映画もあった。刑務所内の人間関係の描写が主軸だ。後は地味な努力の積み重ね。実話をモチーフに映画化されたようだ。実際にフランク・リー・モリス(Frank Lee Morris、1926年9月1日 – 1962年6月11日失踪)というアルカトラズ連邦刑務所を脱獄した男がいたらしい。クリント・イーストウッドが師匠にあたるドン・シーゲルと組んで撮った最後の作品。実話を元にしているところが、最近のクリント・イーストウッドの監督作品にも通じる。

夜の雨の中での島への入所。刑務所が舞台で、全体的に暗いシーンが多い。闇の中で排気口の壁を少しずつ砕き、人形を用意し、仲間とひとつずつ障害を克服していく。ラスト、脱獄した後の青い海が印象的だ。人物キャラクターは、それほど個性が際立っている感じでもない。鼠をペットとして飼っている男リトマス、暴力的に襲い続ける大男ウルフ、絵を描くのが趣味な老人ドクくらいか。脱獄のストイックな描写に特化した映画と言えよう。

1979年製作/112分/アメリカ
原題:Escape from Alcatraz

監督:ドン・シーゲル
製作:ドン・シーゲル
製作総指揮:ロバート・デイリー
原作:J・キャンベル・ブルース
脚本:リチャード・タッグル
撮影:ブルース・サーティース
音楽:ジェリー・フィールディング
キャスト:クリント・イーストウッド、パトリック・マクグーハン、ロバーツ・ブロッサム、ジャック・チボー、フレッド・ウォード、ポール・ベンジャミン、ラリー・ハンキン、ブルース・M・フィッシャー、フランク・ロンジオ、ダニー・グローバー

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