安楽按摩

蓮の池の畔の
開放感のある広い建物
気温は 丁度いい
部屋には仏蛇の絵が 飾ってある
そこに 一人の女がいて
マッサージをしてくれる
その女の按摩は
熟練されていて 当意即妙で
ときに基礎に忠実に
ときに変則的で
ときに強く ときに弱く
女は 疲れた部分をよく心得ていて
言わなくても その部分を探り当てる

静かな音楽が ゆっくり流れていて
僅かに 香の匂いがする
時たま 吹く風は
爽やかで 心地よい

少し霧がかかった山の稜線が見える
ここは シャム北部の高原だ

部屋の中の 暗い 落ち着いた照明に照らされてる
女の顔は 白い

女の按摩を受けると
まるで 麻酔の針を打たれたかのように
精神が 身体が 静まる

女の声は 潤いのある
中くらいの高さの声で
女の吐く息は
ジャスミンの香水のように 甘い
それに若干のスパイスの香りが
乗っている
女の脇からも
汗に混じった 甘い匂いがする

小鳥の囀る声が ときおり聞こえる
知らないうちに 眠ってしまっていた
千年の時が流れたように 感じたが
三時間しか 時は流れていなかった

2024/02/12

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