食について

淡泊な味付けの料理が好きである。これは、僕の体質が自然に要求するものであるし、父親が関西地方の日本海側出身で、家の味噌汁なども淡泊な味付けのものが多く、その結果でもあると思う。刺身が好きだ。特に、白身魚の刺身が好きだ。最近食べたもののなかでも、ヒラメの刺身など白身魚の刺身を特に美味しいと思った。石鯛や黒鯛やベラの刺身(これは関西地方の人しか食べないらしい)も好きで、僕は生粋の白身魚好きだといえるだろう。

うどんは鰹出汁のものではなく、昆布出汁の薄味のものを好む。主に関西地方でこのようなうどんが食べられていて、その意味で僕の味覚は関西寄りだといえるだろう。もともと、胃腸が強くないということもあって、濃いこってりしたものを体が受け付けないということもあるのだろう。刺激のつよいものはもともと苦手なのだが、10代後半以降は、無理をして鍛錬したおかげでキムチやニンニクを入れた家系ラーメンなども食べられるようになった。でも、僕の本心が欲求している味付けはやはり淡泊な薄味のものである。中華料理も四川料理の麻婆豆腐などは大の苦手で、これを食べると今でも腹を下してしまう。

18歳や19歳や20歳の頃にはよくインド料理を食べた(そのころ僕はインド哲学科の学生でインド人の友人が多数いた)。修練の一環のつもりでいつも現地人と同じスパイスの効いた劇辛のものをレストランで注文したり、インド人の友人の家で食べたりしていて、しょっちゅう腹を下していた。ある時点である程度は耐性がついても、限界があることに気づいてそのような修練はやめたのだが。

産地まで遠征して、現地特産のものを食べることが好きである。外房ならば地魚の刺身とか、丹後ならばへしこや岩牡蠣、卵がびっしりついた雌のずわい蟹など。

食は一万人いたら一万通りの好みがあるものだ。よくよく考えてみると、食とは不思議なものだ。どうも、食の好みというものは生まれ持った体質と幼いころから慣れ親しんだ味の蓄積が大きく影響しているようだ。食に関するエッセイをこれからいくつか書いていきたいと思う。

2024/02/12

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