見出し画像

【ブックレビュー】実務家ブランド論

ダイキンのブランディングに長年に渡って携わってきた方の著書です。

これはめちゃくちゃ分かりやすかった。

いわゆるブランディングに関するビジネス書を本著では「教科書ブランド論」と呼び、実務での実践落の難しさを解消するために現実的な落とし所を丁寧に語ってくれています。

「教科書ブランド論」ではAPPLEやスターバックスのような「スーパースターブランド」を例に、スーパースターを目指すための方法論が語られているため、そのまま実践してもつまづいてしまう。あくまで「凡人ブランド」として顧客イメージを今の段階から一つ一つ上げていく(知らない→知っている→何となく好き→好きのような階層)ことを目指しましょうとも語られており、とても納得でした。

ドキッとしたのは「機能的価値より情緒的価値の方が大事ということはあり得ない」ということ。これは自分がまさに陥りかけていたポイントでした。

よく考えてみると分かることなんですが、いくら情緒的価値が優れていても中身が伴わないことには、いずれ破綻してしまいます。例えばAPPLEが今のように絶大な支持を受けているのは、やはり中身が伴ってこそのことで(皆さんそれぞれ趣味嗜好はあるとは思いますが)、APPLEが目指す世界観を達成するための最低限の機能的価値は備わっているのでユーザーのブランドイメージも高い水準で維持されているのです。

そもそもブランディングとは「企業が狙ったイメージを顧客の頭の中に狙った通りに植え付けるための手法」であり、機能と情緒どちらの方が大事というのではなく順序の問題だと言えます。ブランデイング要素を整理し、これから立ち上げるブランドであれば一貫した訴求を行う、既存のブランドで立て直したい場合は各タッチポイントに置いて修正をかける。

いくらブランディングで頑張ってもそのブランドがコアに持つ「こだわり」とかけ離れたイメージを持たせることは出来ません。むしろ一貫性を失うことで悪化させてしまう可能性があります。UNIQLOがLouis Vuittonのような打ち出しをしても、そのようなイメージは持たせられないでしょう。仮に一瞬持ったとしても、購入前後で違和感は必ず生じるはずです。


前置きがまたしても長くなってしまいましたが、以下自分用サマリーです。

持論も交えていますのでご注意ください。

---------------

<ブランディングの進め方>

①存在価値(ブランド・アイデンティティ):企業・商品のこだわり、らしさ

②約束(ブランド・プロミス):「その企業・商品がなくなって顧客が損をすることは何かあるの?」に対する答え。持論ですが、「企業・サービスによって達成したい世界」とも言い換えられると思います

③人格・個性(ブランド・パーソナリティ):商品・サービスを人に置き換えてみる

------ここから自論を交えています------

④ターゲットを絞る(コミュニケーション・ターゲット):商品・サービスのターゲットとなる人を洗い出し、特に狙いたい、使ってもらいたい人(コア・ターゲット)を決めます。広げれば広げるほど対象の絶対数は増えますが、刺さり方は弱くなります。

コア・ターゲットにどう思われてるかを調べ、①〜③から導き出される「こう思ってもらいたい」という姿とのギャップを明らかにする

ここまで来たらあと一歩。④と⑤の間位にあるギャップを埋めるためのアウトプット(制作物など)を検討します。作って終わり、ではなく継続的打ち出しの是非も一緒に考えましょう。ブランドは人の頭に「貯まり」ます。

------------------

これは今年読んだビジネス書の中でも一番良い本でした(今まさにブランディングを担当しているからかも知れませんが・・・)。

いきなりこれを読んでも良いと思いますが、基本的知識としての「教科書ブランド論」について調べてから読むと、本著で語られていることに納得しやすいと思いますよ。

ではでは。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?