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7.手術の日

前回から少し戻りまして、大動脈基部の径が53mmとなっていた夫。いつ大動脈解離を起こしてもおかしくない状況ということで、大動脈弁形成と人工血管置換の手術のために入院した話です。

1)やっとこぎつけた手術

こうして振り返ると、よくこなしたと思うほどの綱渡りな状況をくぐり抜けました。マイコプラズマで肺炎手前だった息子も、気管支炎止まりで復活。息子はぐったり寝てばかりいて、ほとんど食べず、飲まず、どんどん痩せていき、親としてただただ不安で泣きたい日々でした。でも直前に食欲も戻り、なんとか無事に夫の入院にこぎつけました。(病院都合で直前に手術が1週間後に延期になったのは幸いだったような、有給が無駄だったような…、いや、みんなの体調が整ったということにしておきましょう。)

2)一番の課題は、こどものこと

夫の病院へは家から電車で2時間。術前説明は遅い時間、手術当日の立ち合いは早朝から夜まで。年中と小学2年生を抱えた我が家はどうにも回りません。実母が泊りがけで手伝いに来てくれることになりました。

家庭内は落ち着かず、子どもたちも心身共に不安定になっていたと思います。私も今回ばかりは周りにヘルプを求め、友人たちにも相当助けてもらいました。習い事の送迎をしてもらったり、遊びに連れて行ってもらったり、預かってもらったり…。

実母が来てくれていると言っても、アウェイの地ですので、結局は日ごろ仲良くしてくれている、保育園や同じマンションのママ友に、かなり助けてもらいました。私も相当ヘロヘロになっていたのでしょう。ママ友のご両親にも、「遊びによこしなさい」と声をかけていただいていました。

とても家族4人だけでは乗り越えられることではありませんでした。ママ友は宝…。どれだけ助けてもらったことでしょうか。今改めて感謝しています。

3)術前説明

さて術前説明は夕方から。心肺を止める大きな手術なので、本人+2名の親族が立ち会うことを求められました。

私の他には、夫の両親に来てもらうことにしました。
夫の実家には事前に話をしには行っていましたが、どこまで病気について理解してもらったのか、どのように受け止めるのか不安がありました。遺伝性の疾患ということでなおさらです。

外科の先生は両親を見て「突然変異ですね。」とおっしゃいました。二人とも平均以下の身長だからです。それについては、未だに少し疑問をもっていますが、また別で書きたいと思います。

4)手術当日

翌日の手術は8時から。私は7時に到着する必要がありました。始発くらいの電車で、こどもたちが起きる前に出発です。

自宅から2時間かけて、病室に到着、普通に会話をして、時間を待ちました。手術室は10部屋。8時になると、10家族が手術室前で、見送りをしました。

夫もシャワーキャップみたいなものをかぶり、点滴棒をカラカラ押しながら、歩いて手術室に入っていきました。

8時過ぎに始まった手術、終わるのは夜と言われていました。家族の待機室には、不安な面持ちの人たちが複数集いました。

私は窓際の眺めのよい席を陣取りました。

親のことで、手術の待機の経験はあったので、だいたいのペースはわかっていましたが、やはり落ち着かないもの。本を読もうにも頭に入らないのはわかっていましたが、手を動かしていると心が落ち着く気がして、編み物が無性にしたくなり、アクリル毛糸とかぎ針を持ち込んでいました。複雑なものは編める気がしなかったので、ひたすらもくもくと、小さい四角を編み続けました。

看護師さんには、「付添は奥さん1人ですか?」と聞かれました。夫の家族は、どうやら病院が苦手なようなのです。一応午後から来るとは言われていました。

私はたぶん、慣れすぎていました。確かに父が初めて入院した時は、非日常な空気に食欲すら止まったものでした。今や体から排出されるいろいろな液体の入った袋を見ながらでも全然ごはんが食べられる域でしたが、そうではない人もいることは理解できました。そして家族が病気になった時の対応も、各家庭で違いがあるということも。

ただ、トイレも昼ごはんを買いにも行きづらいのは計算外でした!待機室から離れる時は、看護師さんに連絡しなくてはならず、食べる気もおきなかったので、夫の両親が来るまでは、ひたすらじっと編み物をしていました。

どんどん他の家族の方たちは呼ばれて行き、最後に残りました。

19時あたりに先生に呼ばれ、無事に終わったことを説明されました。待っていたのも長かったのですが、この時間の間ずっと手術をしてくださっていた先生方、その体力、集中力を尊敬、感謝しました。

しばらくたってICUに呼ばれ、半分麻酔が醒めた夫と対面しました。まだ挿管されていて、話はできませんでしたが、「順調に終わったよ」とだけ伝えました。

管を取り、夫が話ができるようになったのを確認して、帰宅しました。長い1日でした。