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#133 統計的に有意とは

わたしたちは、自分の子どもたちの豊かな未来のために、多くの育児費や教育費を払っている。

そのどれもが教育評論家・心理学者・脳科学者・行動遺伝学者など、著名な名だたる有識者によって裏付けされていると思っている。

しかし、本当に彼らの言う通りの成果が子どもたちに出ているだろうか?

おそらく、出ている人もいれば、出ていない人もいるだろう。

「あれっ、それはおかしくないか?」科学的根拠があり科学的に証明されるものならば、再現性があるはずだ。科学は再現性があるから論理や法則が正しいと証明されるはずだ。

では、ある教育的効果をもたらす教育方法が、A男には効果があってB男には効果がない場合、その教育方法は科学的に証明されるのだろうか。

証明されるはずはない。

なぜなら、B男には効果が出ていないじゃないか。

すると彼らは言うだろう。「B男は、教育効果をもたらすための前提条件が整っていなかった。そのため得られるべき効果が発生しなかった」と。

それなら、彼らのいう前提条件を整え、再度、教育効果をもたらす教育方法を実施したとする。するとB男には効果が出なかった。

すると彼らは、「B男は、統計における外れ値の存在であり、極めてまれにおこる現象がそうさせてしまったのだろう。そのため、わたしたちの提供する教育的効果をもたらす教育方法は、なんら間違ってはいなく統計的に有意だ」と。

わたしたちの社会にはこのようなやりとりがあちらこちらで見てとれる。

己の正しさを妄信し、真実を嘘のフィルターを通すことで無可視化し、見えないフリをする。このような事象は社会全般で当たり前のようにある。

それは一定の限られた小さな空間でのみわずかな効果がある(根拠がない)空間除菌剤や、水道水とさほど変わらぬ効果の得られる希少水など多岐にわたる。

しかし、どうやって彼らはありもしない効果を科学的に有意なものにすることができるのだろうか?

そこにはからくりがある。

相関関係の研究といえば、疫学がある。疫学者は人の健康状態を左右する環境要因を研究する。データを収集し、分析するために彼らが使用する方法は社会化研究で用いられているものと似ており、それゆえに同じ問題を抱えることになる。

疫学者になったつもりで、ブロッコリーを食べることと健康との関係を調査することになったとしよう。

大勢の中年期の人々に対して、ブロッコリーをどの程度食べているかという聞き込み調査を行い、その五年後に対象者のうち何人が生存しているかを調べる。単純に「生存」を健康体であると指標とする。総じて生きている人の方が死んでしまった人よりも健康なはずだ。

五年後にはブロッコリーを食べることと生存しつづけることの関係が明確になるが、それが下の表になる。

5年後の生存率(%)

            被験者全員    女性     男性
ブロッコリー好き派     99       99      99
(最低週1回は食べる) 
ブロッコリー我慢派     98       99      97
(月1回は食べる)
ブロッコリー敬遠派     97       99      95

この結果をコンピュータに入力すると、ブロッコリーを食べることは被験者全員(99,98,97%ではたいした差ではない)もしくは女性の長命には有意な効果をもたらさなかったとの分析結果がはじき出される。

しかし、男性のみを考えた場合、ブロッコリーを食べることと長命の関係は「統計的に有意」となった。

それはすなわち、ここで生じた数値の差がまぐれや偶然によるものである可能性は皆無ではないがきわめて低いという意味である。

この結果は記録に値するものであり、公表できるということになる。

この研究が疫学関係の学術誌に掲載される。それがある新聞記者の目にとまり、翌日の新聞には「ブロッコリーで男性は長生きにー研究で明らかに」

はたしてこのように統計的に有意なものが本質的に効果があるといえるだろうか?

こうやって本当のような嘘は生み出される。

わたしたちは見出しの言葉のみに注視し妄信し理解した気になる。本来わたしたちがするべきことは見出しではなくその中身を理解し熟考することで物事の本質にふれることではないだろうか。

これに似た方法で、マスメディアは記事を誇張する。また、科学者は大量のデータから自分の都合の良いデータだけを抜き取り統計的に有意なデータを作成する。

そのため、多くの場合、証明できないことをことを証明することは可能だが、証明されたものが本当に科学的に再現性があることを証明ずることは難しい。

わたしたちは、無意識にそういったことを理解しているので、自分の都合の良いものだけを信じてしまうのかもしれない。

はなっから信じられないなら、信じたいものを信じるしかないもんね。


おわり


最後まで読んでいただきありがとうございます。

ななほしさん画像を使用させていただきました。

毎週金曜日に1話ずつ記事を書き続けていきますので、よろしくお願いします。
no.133.08.26

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