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隣にあるあの世界で

私の脳の中には、ファンタジーに浸ったまま一日を送る部位があります。
というか、私の体の半分は、毎日毎秒、ファンタジーに行ったまま、そこで生きています。

半分はここで、半分はあそこで。
物語の世界は私の希望で、同時に逃げ道でした。

嫌だったことからの現実逃避。
こうであったらいいのになあという妄想の塊。
私が妖精だったら羽の色は・・・形は・・・羽の枚数は・・・扱う魔法の種類は・・・住んでいる場所の名前は・・・身に纏う光の服の色は・・・。
そんな想像がわたしを救ってくれます。

家族旅行からの帰り道、夜、車の中、高速道路の早い流れの景色を見ながら、妖精の自分を設定したり、夜景を眺めて自在に空を飛ぶ。
空の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
自分が砂漠の風になって、近くの町の市場の匂いや砂漠の夜の香りを抱えて、世界中を旅する。
鋭い山の頂から飛び降りて、風になって海まで漂い、波を浴びる。
森の雫の匂いを嗅いで目覚める、深い緑色の体の妖精になる。
どんな動物と相棒になろうと考えて、白銀の毛を持つ大きな狼か、丸々太った真っ白な梟がいいなって思ったら、その日の夜の夢に、ちゃんと彼らは出てきてくれた。
胸の辺りを撫でてあげると「コルコルコル」って音を立てて、気持ちいいよって伝えてくれた。

今は大きな翼を持った猫に会いたいです。あとは綺麗な朝焼けの空を塗ってくれている絵描きの妖精たちにも。

ファンタジーに逃げることは、確かに、紛れもない現実逃避ですね。でも、私が、そんな世界によって救われてきたことも紛れもない現実でした。

みなさんには、子どもの頃から今まで、抜け落ちないまま抱えている、大切な物語の世界はありますか。

想像すると涙が溢れてくるような、壮大なのに温かい場所。
遠いのに懐かしい世界。
もしそんな居場所があるなら、それは、抱えたままでいてください。無理して離れようとしなくていいと思います。
ファンタジーをいつまでも抱えていることは恥ずかしいことじゃない。それは、とんでもなく清らかな、大きなあなたの心が、あなたの中に存在するという証です。

あの世界は、地球を生きる私を助けてくれる。

そんな世界は、あなたの夢を美しくしてくれる。

だから、捨てないでね。

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