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真夏の夜の悪夢 (後日談) "逮捕と有罪判決"のルート

関連するシーン: 法廷での証言https://note.com/6halloween9/n/n2a7d87f809c4

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「真夏の夜の悪夢」事件
 https://note.com/6halloween9/n/n3c2526a8faac  から半年以上が経過し、被害者四人(実質三人)の心身の回復を待ってから、本人達の強い意志の元、バンドは活動を再開した。虎のポジションは空席のまま、脱退等の正式な告知はされなかった。
虎の強烈なラブパンチ💖(本人談)によって、転生レベルのえげつない内部振動を味わった三人のメンバーは、それでも塞ぎ込むことなく、活動再開の道を選んだ。

皆帰りたくなかったんでしょ?ずっとあそこで遊んでたかったでしょ?そう言ってたじゃん。だから、皆で隠れりゃいーじゃんって思ったの。皆、絶対見つかんない場所に隠してやろって」

法廷で虎にそう言わしめたのは、いつまでも夏休み気分でいたい、都会の恐ろしい喧騒や、3ヶ月先までどん詰まりの日程の渦の中に戻りたくない、と願い、実際にそう口にしたメンバー自身でもあったからだ。虎にとっては、世を騒がせたこの大惨事も、仲間との楽しい"遊び"に過ぎなかった、ということだろう。

今は亡きマネージャー(O氏)は、自身も若き日にバンドの経験があり、様々な事務所を渡り歩いて、彼らのような将来性ある若いバンドの世話をするのが、ことのほか好きだった。いかにも若人らしいメンバーの自由奔放な態度にも、持ち前の軽快な身のこなしをもって難なく応じていたが、あくまでも日程は日程であり、事務所と取り決めた帰宅の日は刻一刻と迫っていた。
その日が近づくにつれ、メンバーの頭上にどことなく重い空気が漂い始めたのが、誰の目にも分かった。そして、それをかき消すかのように、いわゆる酔った勢い⋯悪ノリで始まったのが、飲みかけのペットボトルを使った「人間スイカ割り」だった。
あの時は、誰も想像すらしなかった。軽い気持ちで始めた遊びが、仲間の心に入ったヒビを直撃し、世界を変えてしまうなんて。

メンバー5人の気質は、バンドの楽曲と同様に自由気ままで、例え仕事中であっても、ちょっと目を離した隙に、行き先も告げず買い物や見物に消えることがよくあった。
普段は注意深くメンバーの動きを追っているマネージャーも、この時ばかりは彼らの行動に対して甘くなり、彼らに束の間の自由を与えようと、"善意の無関心"に務めた。
皮肉にも、その寛大さが異変の察知を遅らせ、被害を拡大してしまったといえる。

俺達は、子供じみたワガママから、取り返しのつかない犠牲を払うことになった。もうあんな失敗は許されない。苦い死の淵を味わった、この経験を全力でバンドに生かさなければ、生きているとはいえない。
もはや失うものはない。彼らの行動は早く、そして大胆だった。文字通り人が変わったようなメンバーの姿に、マネージャーを失った事務所も元気付けられ、その活動を後押しした。

殴られた弾みで崖から滑り落ち、足を骨折した者は、地獄めいた禍々しい装飾のステッキを、ライブパフォーマンスの道具として愛用した。
頭部を殴られ、古いハンモックでサナギよろしくぐるぐる巻きにされた者は、顔が薄らと隠れるような漆黒のターバンを頭部から上半身へと巻いて、妖艶な雰囲気を漂わせた。
暗がりで狩猟者に追われ、九死に一生を得た者は、今もなお恐ろしい何かから逃げ回るように、ステージの内と外を境目なく駆け巡った。
己の致命傷すらも武器にする。それぞれの強く個性的なパフォーマンスが、舞台衣装として彼らを引き立て、会場に集まったファンを魅了した。

更に、タカシの裏人格の覚醒によって、バンドの作曲力は劇的に増幅した。愛する虎への思いを鬼気迫る旋律に乗せ、これまでの代表曲をも上回る、妖しげな狂奏曲を次々と生み出すタカシ。そのおかげでバンドは、四人体制になっても問題なく活動を続行できた。
タカシは様々な規制をかいくぐって、服役中の虎と定期的に刑務所で面会し、その都度得たインスピレーションを作曲に全て注ぎ込んでいるという。

特筆すべき点がもう一つある。逮捕後も虎の人気は衰えず、むしろ法廷での芝居がかったサイコな振る舞いが、傍聴席に詰めかけたファンを熱狂させた上、そこそこ知名度のある真面目な週刊誌や、毎度いかがわしい記事を書くことで有名なゴシップ誌らがこぞって拘置所に取材に訪れ、予期せぬ方面での人気に火がつく結果となったのだ。

虎自身も、各メディアの取材やメンバーの面会を概ね歓迎している。最近ではタカシが仲介役となり、虎の"狂気の犠牲者"たる三人のメンバーとの面会も実現し、少しづつだが、関係が修繕しつつあるようだ。

虎は独房にパソコンを購入し、昼食後や就寝前の自由時間を作詞作曲、イラスト等の制作にも当てており、メンバーとの面会時に、手書きの楽譜やデモテープ、アートワークなどをこっそり手渡すこともあるようだ。
また、法廷中に思いがけず獲得した熱狂的なサイコ・ファン達に向けて、自身のサイン色紙や妖艶なポラロイドも販売しており、実質現在もメンバーとして活動しているといえるだろう|ΦꈊΦ☰)🫶イェイッ♪

関連イラスト:怠惰な囚人

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