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【小説】フラッシュバックデイズ 9話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

9話 コーク

なんとかバイトに行けるようにはなったが、俺の気持ちはなかなか晴れなかった。

そんな状態の俺を知ってか知らずかダイサクから
「珍しい良いものがあるから家にこないか?」と連絡が入った。
ダイサクの家に行くと見知らぬ顔がいた。
ブリコのサングラスをした、いかにもトランスが好きそうな風貌だ。
珍しく良いものとはブリコが持ってきてくれたのだろうコークの事だった。
もちろんコークを見たのもやるのも初めてだ。
映画なんかで見たことのある鼻から吸引するいかにもなドラッグだ。
いつかはやってみたいと思っていたが、高価な事もあり、末端の貧乏ジャンキーには縁がなかった。

ブリコがCDケースの上に慎重にカードでラインを3本引いた。
映画で見たことあるシーンが目の前にあった。現実だ。
ストローでも良いが、お札の方がなんとなく雰囲気が出るという理由で一万円を筒状に丸めたものを渡された。
クシャミや鼻息でラインを吹き飛ばさないように恐る恐る万札の筒をラインの先端に近づける。片方の鼻の穴を指で塞ぎ、ゆっくりと確実に白い粉末のラインを吸い込んだ。
粉末が鼻の奥にぶつかり、痛みを感じた。
鼻に残った粉を落とさないように痛みを無視してさらに吸い込んだ。
頭が一瞬熱くなったかと思うと同時に急激な高揚感を感じる。
ダイサクもブリコも慣れた感じでラインをスーっと吸い込んでいた。

ソワソワしてじっとしていられない。
何でもいい。何かしたい。
気が大きくなっている、古臭い言葉だが、イケイケだ。
今ならヤンキーとも喧嘩できる。
ナンパなんて余裕だ。
普段はできないことが出来そうな気がする。
強烈な高揚感と何とも言えない無敵感を感じた。
心臓の鼓動が早く、血圧が上がっているのがわかる、落ち着こうとタバコを吸う。鼻で吸収しきれなかった粉が喉に落ちてきた。
嫌な感じがしたが飲み込んだ。
「これはイイ、コークってすごいな」
「ヤバいやろ?でもすぐ終わるで」
ブリコはニヤニヤしていた。
ダイサクの言う通り、90度に近い角度の急激な高揚感は射精後のように若干の余韻を残しながら消えていく。
「毎回、残しておこうと思うが、一日でなくなってしまう」
と嘆きながらブリコはまたラインを引き始めた。
確かになくなるまで止まることができない。

3人はパケのコークがなくなるまで直角の高揚感を楽しんだ。
「ホンマにセレブのドラッグやな」ダイサクが寂しそうにつぶやいた。
確かに総額にするとそこそこの金額が数時間で消えた。
貧乏人には合わないドラッグだなと感じた。

家に帰ると一気に現実に戻り、風俗終わりのような虚しさを感じた。
虚しさを埋めるように草を吸った。

つづく

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