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【小説】フラッシュバックデイズ 28話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

28話 ネパール編③ チェイシングドラゴン

太った男の部屋をノックすると、しばらくするとガイドがドアを開けた。部屋には太った男の他にゲストハウスのオーナーが座っていた。
さすがにブランシュガーとなると、ゲストハウスの食堂テラスで堂々とする訳にはいかないのであろう。
皆が輪になっている所に座ると、中央に置かれた金属製のトレイの上で粉末状のブランシュガーがあった。
部屋はあえてなのかわからないがキャンドルのみの薄暗い灯りのみで、いかにも悪い事をしている雰囲気だ。この雰囲気がたまらなく好きな俺はジャンキーであると再確認できる。
ガイドに金渡すと、端をライターで炙った小さなビニールに粉状のブラウンシュガーを渡された。
すぐに試してみたいがやり方がわからないのでしばらく様子を見ることにした。

太った男は見本を見せるかのように、ガムの包装紙のような大きさのV字に中央が折られたアルミホイルの底を少し折り曲げたそこにブランシュガーを乗せた。
ストローか紙幣を丸めたものを口に加え、アルミホイルの底部分をライターで炙ると、ゆらゆらと煙が上がる。その煙は斜めにしたアルミホイルのV字の溝に添うようにゆっくりと上に上がる。その煙はそのまま男が咥えた筒状の先に吸い込まれていった。
続いてオーナーも同じように炙ると、煙がアルミホイルより少し上に上がる。煙を少しでも無駄にしないようにオーナーの吸引力が上がり、筒からシューシューと音をならす。
右回りの順番的に俺の番だ。
ガイドはアルミホイルにトレイから少量のブラウンシュガーを乗せたものをを俺に差し出し、最初の一服目は皆からのおごりだということで、遠慮なく頂く事にした。
アルミホイルを手に取り、緊張と期待を感じながら、ライターに火をつけ、ゆっくりと視線の先の粉末に近づける。
予想とは反し、煙はアルミホイルから離れるようにゆらゆらと龍のように真上に上がった。
俺はとっさに煙を追いかけ、吸い込んだ。

チェイシングドラゴン。言い得て妙だ。

アルミホイルに残った粉末を吸いきるため、数回同じ動作を行うと、煙の流れが予想できるようになった。
ガイドが吸っているのを横目に身体の変化に神経を尖らせていた。
純度が低いブラウンシュガーとはいえ、ヘロインはヘロイン。
トレインスポッティングのレントンのような床にのめり込んでいくような圧倒的な効きを予想したが、草の効果に近いようなほんのり暖かい感覚に包まれる程度だった。効いているのは確かだが、なんだか中途半端な拍子抜けする効きだった。
もう一周ブランシュガーを回すと会はお開きとなり、それぞれ自分の部屋へと戻っていった。

俺は自分の部屋に戻ると、ヘロインの効きがこの程度のはずはないと、ガイドから貰った未開封の粉末を取り出し、先程と同じ要領で煙を吸った。
やはり先程と同様、ほんのり暖かい感覚にすこしダルさが増しただけで俺は拍子抜けし、ベッドに寝転がった。
数時間前までは隣に女の子がいたベッド。
こんなことならあの女の子と一緒にいれば良かった。
とりあえず、何もする気が起きないので、ベッドの上の扇風機を眺めた。
なんだか天井の扇風機が少し遠く感じる。これは効いているのか?
身体は重力が少し強く、身体は動かそうと思えば動かせるが、動くのは面倒だ。
アシッドやキノコのように視覚や思考に変化はないが、若干ではあるが、玉を食った時のような多幸感を感じる。
なんとも中途半端な効きだが、段々と慣れてくると、これはこれで悪くない気がしてきた。
ベッドに数センチ埋まっているような、ほんのりとした多幸感のぬるま湯に浸かっているようなダラダラとした効きが続いた。

つづく

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