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【小説】フラッシュバックデイズ 32話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

32話 屋上

仕事の帰りに行きつけのアメ村のレコード店で取り置きしておいたレコードを受け取り、夕飯を買い家路へ。
部屋に2つある押し入れの1つは立派なDJブースへと変わっていた。
テクニクスのターンテーブルに先程のレコードを乗せ、針を落とす。
奮発したパイオニアのミキサーのレベルメーターが反応し、スピーカーから音が出る。
煙草とガンジャを一服し、レコードをひっくり返し、手持ちのレコードと繋げてる曲を考えながら食事を済ます。
ガンジャをもう一服してからMIXしたり、PCでレコードの視聴。そうこうしていると、近所の仕事仲間から一服のお誘いやら、ネタの入荷連絡の連絡。
どこかで見たような自称DJを演じるには十分に満足できるこの生活サイクルが気に入っていた。

クラブの遊び方も若干変わった。
MADMAの効きに任せて踊り狂い、翌日にはDJがどんな音を流していた断片的な記憶しか残らない遊び方は減り、ガンジャやアシッドを軽く1/4を摂り、DJがレコードを繋いで作り出すグルーヴの中に自分を落とし込むような遊び方が増えてきた。

幸運な事か不幸な事かわからないが、自分の好む箱やDJは本物ばかりだった。今日も紙片を舌下に挟み、レジャー施設の1Fで、なんとなく踊っていただけなのに、いつの間にか踊らされている自分がいた。
MIXという曲と曲を繋いでいくという単純な作業ながら実に奥が深い。
アシッドが効いているせいだろうか、曲と曲の境目はわからず、スピーカーからの振動と音にされるがままだ。DJはパーティーという名の宗教儀式を司るシャーマンのようだ。俺はシャーマンになれるのだろうか?
すぐ先の向こう側のDJブースに自分が立つまでには果てしない距離があると感じた。
自分の好む箱やDJは本物であるがゆえに自分の考えの甘さが露呈した。

俺が何とも言えない気持ちで踊っていると、ユウヤが声を掛けてきた。
「来てたんや?チョコあるんやけど一服せーへん?」
「もちろん、どこでする?」
「ちょ、ついてきて~」
暗いフロアを抜け明るいチルスペース&カウンター、トイレの行列を横目に入り口へと向かう。
ユウヤは受付の人と顔見知りらしくちょっと出てきますと言い、一緒に外にでた。ユウヤは階段を降りてすぐにUターンをし、レジャー施設の屋内駐車場へと入っていった。
そういえば屋内駐車場に入ったのは初めてかもしれない。昭和に作られたとは思えない妙に近未来的なライトが天井からぶら下がっている。しかし、一番奥に見えるエレベーターまでが異常に遠く感じる。アシッドがすっかり効いているようだ。
ユウヤとエレベーターに乗り込むと、「ええ場所見つけてん」
エレベーターのドアが開くと、シーンとした人気のないフロアに出る。ユウヤについていくと重い扉を音が出ないようにそーっと開けた。
そこは非常階段になっていた。そこは誰か来るという心配のない、絶好の一服スポットだ。こういう場所は貴重だ。
そこでユウヤはモンキーパイプを取り出し、二人で一服をした。
一服し終えると上に行こうとと言われた。
何の事かはわからないが、上に上がり再び重い扉を開けると、屋上にでた。
どうでも良いが、理由はわからないが俺は昔から屋上が好きだ。
ほとんど禁止だったが、学校、マンション、いままで自分が住んだり、通っていたりした建物のすべて屋上に行こうと試みた程だ。

二人とも座り込み、何を話すわけでもなくチャラスの効きを楽しんでいた。
空が白み始めた頃、ユウヤもDJを始めた事を話し出した。そして今日回しているDJにも可愛がられているらしく、ある衝撃的な情報を教えてくれた。
行きつけであるこの施設の1F、地下のクラブがもうすぐ終わってしまうという事を知った。

つづく

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