禁酒2か月目 

禁酒してから2か月が経過した。本当にあっという間だった。
いつまで続くんだろうという不安はある。
また何かの拍子で酒を飲んで記憶を飛ばして事件を起こすかもしれない。
『人はそう簡単に変わらないよ』
フラれた日に彼女に言われた。実際そうだと思う。
自分は考え方やテクニックといった小手先の部分で大分まともになった。
人の目を見て挨拶するようになったし、あまりマイナスなことを言わなくなったと思う。
それでも根本は変わってない。怠惰で、卑屈でプライドの高い自己中心的な奴。そういった醜い部分を隠すのが徐々に、とはいえ一般的な人類よりもはるかに遅れて、上達していっている。
仕事で発生するコミュニケーション程度であれば問題なくこなせるようになった。でもやっぱり飲み会は苦手だ。コミュニケーションのボリュームがオフィスと違う。

昨日僕と中途で入社された方々のために歓迎会が開かれた。
もちろんひたすらウーロン茶飲んでた。
設定上は”お酒がものすごく弱い”っていうことになってる。
関わりの薄い人だとすごい驚かれる。
『え?一杯も飲めないの?本当に飲めないんだね!』
凄い飲めそうなのに、という一言が決まって付け加えられる。

どうしても一瞬表情が曇ってしまう。
事件のことがフラッシュバックするし、何より酒が飲めないという嘘と逮捕されたという隠しごとをしている事実がそうさせる。
『本当に飲めないんですか?控えてるんですか?』
ニヤニヤしながら先輩が聞いてくる。
本当はみんな事情を知っているんじゃないか、知ったうえで聞いてきてるんじゃないか。勘ぐって黙ってしまう。
気まずい沈黙が流れる。

全てを打ち明けたい。
打ち明けたらみんなどんな反応するんだろう。
気味悪がって避けるだろうか。
笑ってくれるだろうか。


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