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退院後の経過は…

久しぶりのNote更新となる。

リンパ輸注を終えて退院し、前回のNoteから1ヶ月以上の間が空いてしまった。この時間を一言で表すと『GVHDの苦しみ』と表すことができる。

自分自身に無理が効かないことを改めて悟ったし、今後の自分についても改めて考えさせられることとなった。

GVHDは人それぞれであるので、本件は一患者の症例として同じ様な病気に罹患している方の参考になれば幸いである。

※GVHDとは、治療後の副作用と理解してもらえればと思います。


▼ 異常な口内炎

1ヶ月半にわたる入院生活を終え、地元に戻って約2週間。リンパ輸注直後のGVHDは比較的穏やかに終了した。

「穏やか」という単位は当然人によるが、生死の境を彷徨った同種移植後のVODに比べれば明らかに穏やかであった。

・ 38℃程度の微熱
・ 倦怠感
・ 腹痛
・ 味覚障害
・ 乳腺のしこり、痛み

この辺りが私のおおむねリンパ輸注直後のGVHDであり、退院してからしばらくの間もこの程度の状態であった。

…だがその矢先に、違和感を感じるようになる。

口内にいたるところに異物感が表れ始め、熱い食べ物や冷たい食べ物、更には味の濃い食べ物等を食べたときに明らかに痛みが生じ始めた。

以前にも口内炎を経験しているので、すぐに症状は判明したのであるが、今回はここからが辛かった。

日に日に症状は悪化の一途を辿り、ついには口の中に何かを入れられなくなった。唾液すらも自分を苦しめ、水すらも覚悟を決めないと飲むことが出来ない。

鏡に映る口内炎の個数は、もはや数えられないほどとなった。

「食べないといけない」という周りの助言も私の頭には理解できるのではあるが、ほとんど食が進まずに1日を終えることも増え始めた。

▼ GVHDはいつ始まり、いつ終わる

状況を鑑みて病院へ連絡し、症状を伝える。口内炎と聞くと、大したことはないように聞こえるが、私にとってはもはや死活問題である。

だが、電話口の返答は「数日様子を見てください」という予想通りのものであった。 状態を念押しに伝え、せめて薬だけでもほしい旨を伝えてようやく来院の許可が下りる。

「何かあったらすぐに連絡を」と病院からはいつも言われるが、こちらから連絡をすると第一声は「様子を見て」と緊急では無い様に扱われるのには、未だに私は慣れていない。

病院での診察と、こちらからの説明を聞いて主治医からは「おそらく慢性のGVHDだろう」という診断が下った。

急性とは治療後の時間の経過が間もない時に起きる副作用のことであり、慢性とはある程度時間が経過した後に起きる副作用という意味合いである。

過去にほとんど急性のGVHDしか経験していない自分にとって、ある程度の時間が経過してから生じるGVHDは謂れのない恐怖を感じさせた。

どうしても退院後に順調…だと感じていた体調が、こうも簡単に崩れるからである。

ひどい痛みではあったが、ステロイド剤や痛み止め等の処方がされて診察は終わった。薬を増やしてしばらく様子見となるわけだ。

体の免疫が暴れて症状が発生している訳なので、免疫の働きを抑えることは論理的であるが、免疫の抑制は感染症のリスクを爆増させることになる。

…免疫抑制剤を使うのは、ほぼ最後の手段と言える。

「痛み」という観点では耐え難い苦しみであったが、主治医からは「生命という観点からは軽いGVHDである」という説明があった。

命に関わるGVHDは重症であるが、私の口内炎は軽症なのだ。

…あくまでも生きる中身でなく、生きることそのものに主が置かれていることをご理解いただければと思う。

私はいつ起こるかわからない、そしていつ終わるかもわからないGVHDとの闘いを受諾してこの治療を行ったはずであるが、しばらくは葛藤が続くこととなった。

▼ 体調不良のGW

世間が長期休暇の楽しみに浮かれる中、私は口の痛みと闘っていた。

痛み止めは毎日限界量を使用し、麻酔入りのうがいは絶え間なく行った。食事は麻酔をかけて押し込んでもかなり厳しく、普通に味わって食事が出来る幸せを恨めしく思った。

だが、痛みは治まることもなく、口内に塗布するステロイド剤すら滲みるようになってきていた。痛みで眠れないし、寝ていても痛みで起きることも増えた。

GWの合間に病院に行ったが、診察と対応は変わらなかった。あくまで私の症状は「命」の観点からは軽症であるからだ。

次の一手は免疫抑制剤の使用であるが、主治医はそれを認めなかった。

免疫を抑えて感染症になれば命に関わるほどの状態であることは事実であるし、悪性リンパ腫が分かりやすく再発すればここまでの努力がすべて泡沫になってしまう。

…私も頭では分かっているが、耐え難い痛みと体調の悪さから主治医に検討を訴えたが却下された。

ただ、ただ耐える日々が続いた…。

▼ ようやく回復の兆し

処方された痛み止めと麻酔入りのうがい薬をベースに、痛みにひたすら耐える日々が続いた。いつ治るかは分からないが、治ることを信じて耐え続けるしかない。

先の見えない闘いであるが、何処かで「生きることを望むのならば、時には耐えることも必要である」といった達観を胸に日々を過ごした。

GWを終え、世間がややブルーになっているタイミングでようやく私の痛みのピークを越えた感触があった。

今まで受け付けなかった食品が、僅かながら摂取出来る様になってきた。温度帯も熱いモノはまだまだしんどいが、多少冷えたモノも摂取出来る様になり、幅が広がった。もちろん無理をすればまた後退してしまうので、徐々にながら様子を見て日々を過ごした。

現在は極端に熱いモノは難しいが、概ねほとんどの食品を口に入れられるまで回復した。辛いモノもまだまだ厳しいが、それぐらいの制限であれば今後生きていく中でも不自由がないと解釈して前向きになっているところである。

一方で痛み止めは強いモノ(トアラセット)を変わらず適正量の限度まで飲んでおり、食事の前後で麻酔入りのうがい薬で麻痺をさせた上での状況であるため、完全に万全…という訳ではない。

いわゆる「普通」の体調になるまでは、まだまだ時間が掛かりそうである。

私の口内炎は約1ヶ月の間に前述の経過を辿ったが、これはあくまで私の経過である。慢性GVHDの経過には大きな個人差があり、WEB上でも具体的な見本となる様な情報は見つからなかった。

そのため、0ベースで向きあうしかないと感じたのが今回の学習の一つとなる。医師からも具体的な回答は無く、千差万別の中で日々向きあうことはなかなかしんどいモノであるが、そういう未来を受け入れる覚悟をしたのだからこの辺りはやむを得ないと思われる。

▼ GVHDは適度にあった方がいい

一般論としては、GVHDはある程度あった方が良いということになっている。GVHDと免疫の正の働きには明確な因果関係はないと私は考えているが、あくまで一般論としてはやんわりとしたGVHDと共存するコトが理想的らしい。

※強すぎるGVHDはQOLに悪影響を与えるし、GVHDが全く起こらないことは移植の免疫効果に疑問符が付く…らしい。

その中で今回のリンパ輸注時の急性GVHDは非常に穏やかなモノであったし、直近に起きた口内炎も慢性GVHDも相対的に軽度と言うことなので、私に起きている反応は医学的には理想的と言われている。

…もちろんだからと言って悪性リンパ腫の再発が起こらない保証などどこにも無いし、何かのきっかけで感染症に罹患した際に免疫が十分に活動してくれる…とも限らない。

神に祈る様にリンパ腫の再発が起きないことを願い、感染症に掛からない様に日々の生活で気をつけるしかない。

WEB等からの情報はどうしても一般論しか手に入らない中で、自分の身体の変化をどの様に受け入れるかは人それぞれかと思う。私の経過も目にした人によってどの様に受け止めるかではあるが、一つの情報として捉えてもらえればと考えている。この経過が正解ではないし、同じような経過になる可能性も少ないだろう。

だが、無数の口内炎によるQOLの悪化は著しいものであったし、Noteの執筆の意欲もかなり削がれて今日まで経過してしまった。とりあえず今回の投稿を持って、ある程度回復した…と言うことにして欲しい。

▼ 美味しいご飯のために生きたい

大病をしてから、様々な欲を失っている。

行きたいところも、欲しいモノもほとんどない。家族を連れての旅行はもちろんしたいが、4歳になる息子の意向と私の体調がかみ合わなければなかなか実現はされないことになる。病気をすると金銭的な不安も感じたことから、あまり散財することも慮れる。

そんなわけでお金を使うとなると「食」であったのだが、口内炎の影響でしばらくその欲求も失ってしまった。体重を増やす意味でも食欲は失いたくないのではあるが、かと言って誰かに「いま食べたいモノは??」と聞かれるととても困る。

退院してからかなりの時間を費やして食べたいモノを調べ上げてきた…のではあるが、そのリストを見直してもほとんど「食べたい」という欲求は出てこない。

生きる意味を見直した時にこの「美味しいごはんのため」という気持ちは失いたくないのであるが、今はだいぶ下火になってしまった。

…食欲をなるべく早く取り戻して普通の人に近づきたい。

美味しいご飯を思い描いて食事をして、そして「美味しい」と感じるという至って普通のことが出来ることを望んでいる。

強く、強く。

▼ さいごに

前述の通り、体調が幾らか回復したので久しぶりに文章を書いた。無理をしない様にしているが、気持ちと体調に折り合いを付けなけければ今後も色々大変なことがあるとは思う。

ある程度リズムが掴めないうちは、不規則なペースになってしまうとは思うが、出来る限りのことをしていきたいと思う。


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