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【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に

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(作品のあらすじ)私は、捨てられた小さな黒猫だ。ある日、一人の人間の男と出会った。どうやら愛想もない私を、彼は手放すつもりがないらしい。だから、私は彼と暮らす事にした。 ――ふむ… もっと読む
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記事一覧

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(最終話)

 夢を見た。  男と出会い、私が温かい家族の一員になって過ごした十四年という長い時間。そ…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第9話)

 それから、私は十四回目の春を迎えた。  野口の急な転勤で、あれから娘には会えていなかっ…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第8話)

 あれから、また季節は廻っていった。  娘は大学に通い出してから、一人の男と交際を始め、…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第7話)

 娘は最後の部活の日を終えると、大学受験に向けての勉強を本格的に始めた。  帰ってきても…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第6話)

 高校に上がってからというもの、娘はいつも落ち着きがない。  初めての部活に、沢山の勉強…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第5話)

 伊藤家での毎日は、驚くほど平和過ぎて早々と過ぎていくようだった。  男は、毎朝食事を済…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第4話)

 男の家には、一人の女と、子供の小さな女がいた。  私は、大人の女が男の妻であり、小さな女が二人の子であると分かった。小さなその娘からは、二人と同じ匂いがしていてどこか似通った雰囲気を感じた。  同じ呼び方になるのも面倒なので、私は男に紹介された言葉のまま、小さな彼女を『娘』と呼ぶことにした。  どうやら先に話でもしていたようで、男が私を抱えて帰って来るのを待っていたらしい。長い髪を後ろでまとめた女が、タオルを手に駆け寄って来てタオル越しに私を抱え持った。  温めてく

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第3話)

 どれほど眠っていただろうか。  ふっと意識が浮上して眠りから目を覚ましてみると、活気に…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第2話)

 結局、その日の夜は、雨が降ることはなかった。  翌日には見事な晴れ空が広がっていて、通…

【小説】猫の私が過ごした、十四回の四季に(第1話)

 目に留まるものは、足早に行き交う人々と大小様々な車。曇天の空には重い雲が広がっていて、…