「野次を飛ばす男」 モンスターエンジン西森日記4
お祭りで漫才。
東大阪の、金物団地という、工業地帯のお祭りで漫才。
工場の中庭みたいな所に、ステージがあった。
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お客さんの柄が悪くて、終わってた。
僕の地元やのに。
「俺は、こんな所で育ったのかぁ〜〜」
生駒山の上から、叫びたかった。
野次が多かった。 僕の地元やのに。
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特に、20代半ばの、元ヤンであろう男が、ネタ中、何度も野次って来た。
そいつは、最前列にいた。
舞台に右肘を乗せて、相方側から左手で酒を飲みつつ、観ている。
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相方からは、五メートルも離れていない。
かなり近い所、からの野次。
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しかも、大音量、だった。
しかも、回数が、多かった。
しかも、野次のタイミングが、最悪だった。
しかもビッグ3だ。
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野次に、最高のタイミングなど無いが、この男のそれは、最悪だった。
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言葉や、会話に、センスのある人間は、、
「ここ」っていう隙間で、ポンと軽快に、野次ってくる。
返すのにも困らない。 あと、上手くいけばウケる。
しかし、この男の、、、
「この男」と表記するのも、勿体無い。
ここからは、『河内センスえぐれ』と表記します。
余計に、長くなってしまった。
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しかし、この「河内センスえぐれ」は、、
こちらが喋っている途中に、野次ってくる。
しかも、僕らのマイクを通した声と、大差無い、大きな声だ。
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えぐれ、の言葉は、、、
もうコイツは『えぐれ』と表記する。
あらゆる事で、平均を下回るという意味の『えぐれ』
即席で付けた割りには、もう気に入っています。
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えぐれ、の言葉は、お客さんに聞こえなくて良い。
しかし、こちらは困る。
僕ら台詞が途切れ途切れの虫食いで漫才したのでは、ウケるものも、ウケない。
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うるさすぎて、どうしようも無かったので、、
『じゃあ、この人にやってもらいましょう』
と、僕が言った。
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僕は、それほど、怒ってもいなかった。
慣れているのだ。
若手の頃は、本気で怒っていた。 帰れ的なことを言ったこともある。
大人になったのだ。
これよりもっと劣悪な環境で、やった事もある。
なので、冷静にそうした。
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どの道、あんなに頻繁に、大きい声で意味の無い
野次を飛ばされても、ウケようが無い。
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仕方なかった。
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スタンドに刺さっていた、マイクを取って、えぐれの方へ、、
『どうぞ、どうぞ、こっち来て、ギャグでも何でもやり!』
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えぐれ、アタフタしだした。
本当に、やる可能性も、あるので、少し待った、、
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『やって、やって、僕ら立ったまま、待っとくし』
、
えぐれ、アタフタ。
何故か、その、えぐれのアタフタを、えぐれの友達が動画で撮っている。
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行ったれ行ったれ、みたいな感じだったのかも、知れない。
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その友達も、えぐれていた。
見るからに、えぐれていた。 品の欠片も無い。
品の欠片が、空から沢山、降りかかって来ても、、
新品の「コーモリ傘」ぐらい弾くと思う。
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「うわぁ、、、」って、なった。
動画を撮る、友達を見て、「うわぁ、、」
お分かり頂けるだろうか、この 「うわぁ、、、」という、感じ。
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「うわぁ、、、」 こっちも、えぐれてる、、。
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当本人の「本えぐれ」は舞台上には来なかった。
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そして、そこからは、一言も野次らなかった。
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あれ? 帰ったのかな? 思う。
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元いた場所に、視線を送る、、
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居る。 黙ってる。
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何秒かして、また思う。 あれ?これは帰ったな。
、
、
居る。
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、
逆に、違和感、大。
僕だったら、恥ずかしくて直ぐ帰る。
急に黙る方が、恥ずかしい。
でも、居る。
、
、
何秒かして、また思う。 居るのかなぁ?
でも、そんなに頻繁に、見れない。
西森めっちゃ確認するやん! と、なってしまう。
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でも、居るはず。
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、
終わるまで、気になって仕方なかった。
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漫才が終わって直ぐ、そのまま舞台上で、金物団地の人達から、花束を贈呈された。
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やったぁ! 確認出来る。 どうや?
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居る。
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居るのだ。 えぐれはそれぐらいでは、帰らない。
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次からも野次られたら、ああする事にしよう。
切れずに済んだ。 #大人になったものだ
、
おやすみなさい。
この様な日記を集めて、本を出版しました。 出版業界の方、何かあれば、宜しくお願いします。
三冊目の本を出したいので、宜しくお願いします🙇🏻 二冊目の「超人間観察」の方が面白いのに、何故か売れ行きが……。 宜しくお願いします🙇🏻