鉄道を生涯愛せるか?~「最長片道切符の旅2015夏」の記録~2.絶景の条件

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2.絶景の条件

全国をくまなくめぐるということは、どれか見たいもの、見れば感動するものだけを選ばせてくれるとは限らないーこのときが2回目の東北でしたが、最初の時と同じくらい強烈な記憶が残っています。

5日目:2015/07/30曇り時々晴れ 長万部→秋田

20本目:長万部1:03→急行はまなす202ㇾ→青森5:39 4h36m

25分近く遅れて出発しました。この列車、ほかの特急列車とは違って森から大沼公園を経由せずより距離がないが鹿部を通ります。函館での停車時間までに遅れはほぼ戻りました。

本来は函館の手前の五稜郭で津軽海峡線と線路がわかれます。急行はまなすは函館~五稜郭を2度通りますがここも特例で改札を出なければ追加運賃なく乗車ができます。

はまなすは、寝台もつないでいましたが、普通の座席を並べている車両もありました。自由席なんて完全この手のものなんですけれど、乗客が少ないので前の列の座席を反対向けると足を投げ出してくつろぐことができます。

このスタイル、案外眠れます。まあ、高速バスの車中泊よりはってくらいですけれど。時々「バーン」と音を立てて揺れると目が覚めます。根本的には熟睡はできませんでした。

こういうときの夜って長いはずなんですけれども、明けない夜はないといいます。人生2度目の青函トンネルを抜けると朝日が雲間から漏れて海面を照らしていました。

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夜行列車から見る朝日って、いつも朝日と変わらないはずなのに特別なものにみえるんです。いつもよりきれいにみえるというか、夜行列車に乗っていた時はそんな風にいつも思っていました。

こんな雄大編成。北海道では新幹線と貨物列車以外ではもうなかなか見れなくなりました。あの大きなヘッドマークも。

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朝日に照らされる船もきれいなもんです。急行はまなすに乗れば、接続する普通列車に乗れば新青森から朝早く盛岡や仙台に新幹線で到達することができるようになっていました。

朝食は近くの市場で「のっけ丼」まあワンコインの海鮮丼ですね。おいしかったんですが、オーダーするときに現地の方の方言が聞き取れなくて(声も小さかったということはありますが)何が何だかわからず苦労しました。

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今はどうなってるんでしょうね…

青森駅に再び戻ったぼくは、五能線へ進めます。リゾートしらかみを捕まえました。指定券は急行はまなすを降りてからで十分間に合いました。

※函館本線→江差線→海峡線→津軽線

21本目:青森8:10→臨時快速リゾートしらかみ2号8522D→十二湖11:25   奥羽本線・五能線 3h15m 

川部から五能線へ。曇りながらも少し晴れ間がのぞいたこの日。2014年末以来2度目の東北の旅へ。前回は雪が深く、水墨画のような世界を歩きましたが今回は夏。

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途中、リゾートしらかみは千畳敷で10分ほどの停車時間が設けられていました(当時)。2014年冬も行ったんですが、いざ撮影しようと思ったら電池切れという事態に。リベンジになりますね。まあこれは普通にきれいでした。

今回は、コンパートメントに空きがあったようで、相席になりましたが座っています。相席の人はリタイアした男性。青春18きっぷなどで旅行していたそうです。「体力的に4-5日しか無理だなあ、そのあとは休んでからまた次の旅行に出るつもりだ」と言いつつも、いまを謳歌しているように見えました。

十二湖駅で下車して山をバスで上がり、名所のひとつである十二湖へ。緑が豊かでとてもやすらぐ場所です。

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いやあ、それでも蒸し暑かったですね。歩き回りまして、相当疲れて昼飯も食べたんです。煮干しラーメン。青森のラーメンですね。でも、なんでこんな暑いときにこんな熱いメニュー頼んでしまったのでしょうか

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22本目:十二湖15:23→普通328D→東能代16:44 1h21m 五能線

緑を堪能した後は、キハ40系普通列車に乗り換えて東能代へ。さすがに歩き疲れてかなり眠っていましたが…

※奥羽本線→五能線

23本目:東能代17:27→普通1668M→秋田18:30 1h03m 奥羽本線

秋田に着いた頃に日が暮れていきました。ホテルを予約しましたが、駅からなぜか遠い。結構歩きました。片道で15分くらいかかりましたでしょうか?この日の夜は安く済ませるつもりで結局、エキナカのそば屋を選びました。それもホテルにいったんついてから決断してしまいましたので、もう一度往復することになってしまいました。

そういえば、夜の秋田の写真、もう少し撮影しておけばよかったですね。


6日目:2015/07/31晴れ時々雨 秋田→山形

24本目:秋田6:52→普通530M→酒田8:44 羽越本線 1h52m

この日も朝はまずまず早い。7時前の列車に乗り込んで、羽越本線を新潟方面へ下ります。時折海辺を拝みつつ、のんびりまったりと。ただ、寝不足気味で少し眠い。

途中青春18きっぷで旅をする高齢者組がいらっしゃいました。なぜか話をすることになりましたが、お住まいがぼくの故郷の隣の市町村だと聞きました。世界は広いようで狭い、そして、広い。

25本目:酒田9:23→普通824D→村上11:43 羽越本線 2h20m

酒田からは電化区間ですが、気動車が走ります。ここもひたすら南下。それにしても、この日は使える写真がないんです…

この日はもともと早めに切り上げられるように考えていました。このあともひたすら移動し、山形で早めに休むという計画です。

26本目:村上12:23→普通936M→坂町12:35 羽越本線 0h12m

坂町でお昼ご飯。この日は駅前の食堂で。朝の量がそれなりに少ないものだったので、どんぶり食べてましたね。暑い日にまた熱いメニューです。

27本目:坂町13:34→普通1130D→米沢15:35 米坂線 2h01m

ここまで秋田から新潟県へ入っていましたが、ここから山を分け入って山形県へ渡ります。本当は、坂町から新潟までは1時間くらいで行けるような距離ではあるんですが、実は新潟駅に着くのはこの日の5日後の夜になります。最長片道切符ならではになります。

つまらない路線という評価もありましたが、山岳ムードを楽しめると思います。夏であれば緑がきれいですし、冬は雪が降りますので雪景色がとてもきれいです。

28本目:米沢16:27→普通449M→高畠16:40 奥羽本線 0h13m

ここから奥羽本線で山形市内へ北上します。1回南へ下がったのにまた北へ上がるんです。

途中高畠駅に降りて初めてのエキナカ温泉で小休止。まあ、当然記録画像は存在しません(存在したら大変なこと)。疲れをとり、お風呂上りにアイスを食べて一服。それから再度普通列車に乗って山形へ向かいました。


29本目:高畠17:42→普通453M→山形18:21 奥羽本線 0h39m

この日は絶対に早く休むと息巻いていたのですが、そうはなりませんでした。

安宿に荷物を置いたところまではよかったのです。そして、夕飯はラーメン。チャーシューがおいしかったのはよかったのですが、安宿に戻ったたらなんと当時のコンデジをラーメン屋に置き忘れたことが発覚。

ダッシュで戻ったら、さすがは本州の夏。汗びっしょり…

閉店時間になっていたので、もう店のカギが閉まっていることも覚悟しましたが、鍵が開いていたのでそのまま入りました。

忘れ物をしたことを告げると、自分の座っていた席からコンデジを拾いました。すると、親切にもよく冷えた水を持ってきてくれました。もう閉店時間ですからサービス終了なんですけどね本当は。息が上がっていたぼくはすぐには動けず、「まあまあ水でも飲んで」という店員さんの声にそのまま甘えることにしました。

当然旅行客だったぼくは、店員さんと話しているとそういう話題になります。だいたい店員あたりはぼくより人生の先輩であるわけで、「昔自分も…へ行った」みたいな話をうかがうわけです。いまと同じ感覚ではないはずです、なるべく当時の時代背景や子どものころだった場合はそのころの記憶をたどって語るその人が見た景色を少しでも浮かべられるようにしているつもりです。

数十分話したところで再び宿へ戻りました。この日も寝不足が確定しました。


7日目:2015/08/01晴れ時々曇り 山形→北上

この日も寝不足気味だったと記憶しています。

30本目:山形7:06→普通421M→新庄8:23 奥羽本線 1h17m

北上へ行くなら仙山線から仙台へ出て、新幹線で行くのが一番早いと思うのです。しかし最長片道切符の旅ですからそんなことになるわけがありません。仙山線との接続駅(本当は羽前千歳だけど)の山形ではその路線には乗らず、奥羽本線(現地の通称は山形線)をひたすら駆け上がります。

またまた朝早めの普通列車で新庄へ。


31本目:新庄8:45→普通2435M→大曲10:25 奥羽本線 1h40m

ひたすら進むわけです。途中、横手で降りる選択肢もあったはずなんですけど、そうするとまたまた乗り換えに苦労するということでパス。でも後でよくみてみると横手から大曲はまだ本数あるんですよ。割り込ませればよかったかもしれませんね。

大曲では乗り換え時間相当待ちました。実は可能な限り特急・急行を使わない方針をとっていまして無理やり普通列車を待った結果ここで2時間くらい待ちましたでしょうか。暑くなってきたので駅舎から出て延々と探検するのは断念したのでした。一度北海道の夏になれると大変です。

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大曲駅のホームですが、左側が奥羽本線で右側が田沢湖線です。秋田新幹線が出入りしている関係で、田沢湖線が新幹線のレール幅になっていることがわかります。大曲~秋田では在来線線路と新幹線の線路どちらを走る列車も入れるのですが、福島~新庄と大曲~盛岡の区間は、線路の幅は新幹線のものしかありません。新幹線車両を元々在来線が走っている区間に入れようとした苦労が垣間見えます。


32本目:大曲12:18→普通8332M→角館12:38 田沢湖線 0h20m

角館までは乗ったら20分。あっという間です。ついたらまずはご飯。冷たい稲庭うどんを食しました。

普通出回っているのは讃岐うどんに近いような麺ですが、稲庭うどんというのはとにかく麺が細い。独特な食感が特徴なんですよね。暑いので冷やしにして食べましたが、あっという間に平らげてしまいました。

そのあとは、アイスを買いつつ角館の武家屋敷へ。ここも緑や紅葉あるいは雪景色と合わさってすごくきれいなところです。

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こう静かな落ち着いた雰囲気なわけです。秋になったら紅葉が燃えるように広がり、冬は白い雪があたりを染めていきます。いつだったか、春夏秋冬あるのだから4回まわらなければいけないという言葉を旅の先輩からいただきましたがまさにその通りだと思います。


33本目:角館15:25→普通840M→盛岡16:56 田沢湖線 1h31m

普通列車は朝7時台の次はこの15時台まで角館から田沢湖を越えて盛岡へ直通する列車がありません。秋田新幹線こまち、つまり特急はあるんですけれど特急料金がいります。

乗車券のみで乗れる列車はこの時間まで待たなければいけないのです。

34本目:盛岡17:10→快速はまゆり5号3625D→新花巻18:00 東北線・釜石線 0h50m

13分の乗り換えでそのまま東北本線へ乗り換えてここまで北上してきたところを南へ駆け下ります。快速はまゆりは釜石方面への直通列車。この列車は新幹線と乗りかえる新花巻までそのまま行きます。

新花巻。在来線のホームは本当にこじんまりとしていました。そこから通路を通って(ほとんど離れたバス停から駅まで歩く感覚でしたけど)、新幹線の駅舎へ。

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在来線の駅ってこんな感じなんです。周りは緑が豊富です。

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新花巻駅の待合室で新幹線を待っている間に日暮れを迎えました。

窓の向こうに夕日が遠く山の向こうへ去ろうとしていました。この日は夕日がドラマチックできれいでした。こういうのもきれいな景色というのかもしれません。

実は東北新幹線に乗る機会、このときが初めてでした。新幹線の駅といえばそれ以前は名古屋・京都・新大阪・東京といった駅に降りることが大半で、こんなのんびりとした待合室が新幹線の駅に存在するということ自体ぼくにとっては新鮮でした。


35本目:新花巻18:52→東北幹やまびこ56号→北上19:00 0h08m

新幹線に乗るのに1時間くらい休憩してから乗ったんですが、乗っている時間はほんのわずかでした。いまや減っているE2系のやまびこ。やっぱり新幹線は速いですね。

ちなみにこのあたりまで来て、スマホ経由であることがわかりました。

JR北海道の石北線が気象災害で不通になったというニュースでした。

ぼくは7月にスタートしていたので、免れましたが本州に渡った直後に被災したようでした。8月にスタートしていた人もいたようですが、払い戻しが通過する対応をとっていたようです。こういう意味でもルートを予定通りすべて通過するということが簡単でないなあと思いました。

ただ、後半戦でそれが対岸の火事ではなく自分に対して突きつけられることになります。

北上に着いたら夜ご飯と思ったのですが、ところが店が開いてないんです。いまは文めりの利器がありますから、スマホという便利ツールで調べるわけです。そして、ようやく見つけた定食屋で晩飯を食べました。日替わり夕飯定食みたいなのがあってそれをオーダーしました。確かひき肉なんとか丼定食だったはずなんですが…

「カウンターに座っている人は話してもいいという人が座っていることが多いんだよ。テーブルに座る人はそうじゃない人が多いな」

この定食屋の主人はそう言いました。年配の男性の方でしたが、来店した客を見てるんだなあと感心しました。実際、ぼくは旅行中であれば話しかけられれば、原則対応するタイプの人間だったからです(逆に話しかけることはあんまりない)。

しばらくいろいろな話をしてから宿に戻りました。

この日はカプセルホテルだったんですが、まあちょっとカプセルを閉めるとすぐに暑くなるんです。どうしたもんだかと思いました。仕方なく開けるんですがそれはそれでまた落ち着かない。疲れているのにたいして疲れは取れなかった。そんな一夜になりました。

定番の情景も、ふと窓の外を見やったときの夕日もどちらも絶景でした。

本来であれば、翌日北上から一ノ関へ下りさらに最長ルートを進んでいくのがセオリーです。しかし、2011年の東日本大震災によって運転されていない区間がありました。もし代行バスが走っていればそちらを通ってさらに最長ルートが長くなっていたのですが、それはかないませんでした。

でも、どうせならと青春18きっぷと途中区間を路線バスで乗り継いでそのルートをたどることに決めていました。

初めての本格的な「途中下車」になりました。


長万部→北上間の小計 23h18m乗車/16本乗車

総合計 乗車本数35/乗車時間53h20m


(つづく)

つづきはこちら!



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