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札幌国際芸術祭SIAF2024 SCARTS・未来劇場 感想など

ちょっと時間が空いた隙に、札幌国際芸術祭の一部の会場を覗くことができました。情報・感想をまとめます。
※作家名はすべて敬称略で記載しています。


札幌国際芸術祭SIAF2024について

基本情報

札幌国際芸術祭は、札幌市内の広い範囲で同時企画を開催するアートイベントです。今回は雪まつり期間とも重なっています。

1月20日から美術館会場などで既に始まっていますが、雪まつりが行われる大通公園の会場やイベント的なスポット展示等は、雪まつりの時期に合わせたこれからの展開です。そして2月11日以降、関連企画は3月3日までかけて段階的に終了していきます。

会場は複数あり、無料会場と有料会場に分かれています。営業時間もそれぞれ異なり、都心部の会場は18時、19時までやっている場所もあります。

有料会場は一律料金で、単発で見る場合の個別会場チケットと、複数会場を回れるパスの販売があります。パスは2か所以上行くならお得になるやさしい仕様です。

有料会場の判別、チケットの購入方法

サイト内の目立たないところにチケットメニューがあり、クレジットカードなどを使ってオンラインで購入できます。
どれが有料会場なのかも見づらいところに書かれているのですが(会場情報の横あたりに小さい帯が&チケットボタンを押した先のページにまとめがあります)、おおよそ美術館系は有料、公園系は無料と考えて良さそうです。

なお、オンラインチケットは入場何時間前までなどの制限が(少なくとも執筆現在)特にありません。有料かどうか探せないときはとりあえず会場まで行って、会場前でオンライン決済することも可能です。紙のチケットの現地販売もあります。

撮影

撮影の可否は会場によるとなっていますが、私が訪れたSCARTSと未来劇場はどちらも撮影可能でした。スマホはあらかじめ充電をしておき、写真が趣味な方はカメラのご用意を(ただし三脚は不可の場合多)。

会場情報の得方

HP、きれいなんですが、情報を探すにはちょっと…その…(濁
なので、どれでもいいので最初に行った会場でぜひ、紙の全体ガイドブックをもらってください。小さくまとまっていて非常に見やすいです。

アクセスはどんな感じ?1日で回れる?(非札幌民向け)

主に雪まつり観光と合わせて来札される方向け情報です。

大通公園会場・SCARTS会場・未来劇場

この3か所はかなり固まって位置しています。すべて「駅で言うと大通駅付近」で、大通公園で言うとテレビ塔の近辺になります。地下も整備されているエリアなので、雪に慣れていなくてもそれほど地上を歩かず容易に移動可能です。

道立近代美術館・札幌市資料館

この2か所はいずれも「大通公園のテレビ塔と反対側の端のあたり」にあります。大通公園上、テレビ塔から資料館まで1.5㎞くらいと考えてください。

健脚な方なら展示まで含めても徒歩で往復できると思いますが、少しでも歩く距離を減らしたければ西11丁目(資料館最寄)か西18丁目(美術館最寄)まで地下鉄でそれぞれ1駅、2駅です。

地下公園

「だいたい大通駅~札幌駅の間らへん」。便利はよく、地下なので雪道の心配もないエリアです。便利が良すぎて、うっかり行き来していると簡単に歩き過ぎになるので注意。
会場が一定でなくイベント的な開催が多いようなので、行きたいものに合わせてお調べください。

芸術の森美術館

中心部からはけっこう距離があります。大通から地下鉄で終点まで20分ほど、さらにそこからバスで15分くらいです。会場をしっかり楽しんで同じ日に他の会場も回りたいと思ったら、1日空いている日のほうが確実かも。

モエレ沼公園

中心部からも、芸術の森美術館からも距離があります。大通駅から地下鉄15分、バス25分。
大通駅近辺の会場なら同日に回れると思いますが、芸術の森美術館との同日両立は諦めた方が無難です。行けたとしても移動の思い出のほうが多くなりそう。

総評:「その場に足を運ぶ価値」の創造

SCARTS会場と未来劇場を回ってみて真っ先に感じたのは、「足を運ぶ価値」を創造している展示だということです。

撮影可能な作品が多く、これから会期が進めばSNSやブログなどで作品の様子を目にすることも増えると思います。
しかしそれでもなお、その場にいて体全部で没入を感じる、音響表現や錯視的な表現のような人間の耳目でなければ得られないものに触れる、用意された機会に体験的に自ら関わる等を通じて、画面越しでは伝わらないような特別な意味・経験を得られる展示が多いと感じました。

デジタル時代になって、芸術も商業施設も総じてこの「瞬く間に画像や動画が共有される世界で、どうやって足を運んでもらうか、足を運んでもらうだけの体験価値を創造するか」が課題になっています。SIAF2024の展示は全体として、各アーティストのそれに対する答えが示されているように思います。

私はこの記事でいくつかの画像を載せます。でも、画像だけでは決して伝わらないものが現場にあります。ですから、「なんだ、こういうものか」と思って終わらないでください。全部の会場は見られなくても、無料の場所だけでも、少しでも触れてみてください。

各会場の感想・案内

SCARTS会場

小ぢんまりした会場です。館内いくつかに分かれてエリアがありますが、ただ見るだけで楽しめるのは1か所のみで、それ以外はエリアガイドや読み物、解説などが中心です。

しかしその残る1か所、1階にある暗室形式の作品は、「えっこれ本当に無料会場でいいの?」というくらい質の高い体験ができる場所です。

SONY Group Corporation《INTO SIGHT》 本noteのヘッダーもこの作品です。

くり返しの映像が一周するまでちょっとかかりますが、見切れないほど長いわけでもないのでぜひ長めに体感してほしいです。思わず「わぁっ」と声が出てしまう瞬間がきっとあります。それでいて写真映えも◎。

※視覚的、聴覚的な演出が多いです。過剰な明滅や意図的な大音量はありませんが、感覚過敏がある方はある程度対策を持って臨みましょう。入ってみてつらかったらすぐに出ることも可能です。

未来劇場

SCARTSよりも広く、有料会場でもあり、複数のアーティストの色々な作品を見ることができます。
元々劇場だった施設で、裏方部分を展示に利用しているのもあって、段差が多くバリアフリーとは言えません。公式のバリアフリー情報でも対応はお問い合わせくださいとのこと。
その他バリア関係をまとめました↓

・聴覚:ごく一部、聞こえないと楽しめない作品があります。
・視覚:ほとんどの作品は接触禁止です。立ち入り禁止エリアにしっかりとワイヤーなどを引いていないものもあり、暗い場面も多いです。視覚に障害のある方がひとりで楽しむのは厳しいかも。
・過敏:明滅などの強い視覚刺激はありません。ヒラ場で突然大きな音がする作品もありません。ただVR作品があり、私は音量が怖くて断念したのでそこは不明です。全体は静かですが音を使った作品は他にもあるので、気になる場合は遮断ツールを持って行くと良いでしょう。
・操作技術:一部、デジタル機器を自ら操作して楽しむ場面があります。

中でも私が感動したのはキャシー・ジェニトル=キジナーとアカ・ニワイアナの《Rise: From One Island to Another》でした。私はふだん格別に環境活動家に共感するタイプではないのですが、それだけではない色々なものを詰め込んで作られたこの美しい動画作品は本当に心に響きました。泣きそうになり、何回でも見たい、覚えて口ずさむほどになりたいと思いました。

難しいことを言うなら、インターセクショナリティを前提として、微力無力を感じながらも前を向くことについて描いた作品だと思います。なぜこの部分が〇〇なのか?と言い出したら、無限に追求できる作品です。

が、そんなことは放り出して、「なんて強い」と見入ってしまう。
日本語訳もあるとはいえ、英語が分かるほうが楽しめる作品なのがおすすめしにくいポイントですが…私はこの作品がいちばん好きです。

他に、チェ・ウラム《穴の守護者》《無限の穴》の独特の動きとストーリー、後藤映則《In motion》の何度見直しても不思議な感じと見渡したときのなんだかほっとする感じもイチオシ。

でも上記3作品はどれも「画像ではまったく何も伝わってくれない」作品群。ぜひ現地で見てほしい!
なので画像は青木美歌のガラス作品です。これも、現地で見るのと画像とではまったく伝わり方が違うと思うのですが。雪、じゃないんですよ、これ。

青木美歌作品展示室の一部。全容はぜひ現地で。

まとめ:SIAF2024に行こう

雪まつりに行こうと思っている方、年末年始に旅行し損ねた方。気軽に訪れられる機会だからこそ、ふだん芸術に縁のない方にも、まちなかの会場だけでも覗いてほしいなあと思います。

って、どこの回し者?と思われそうなんですが、どこの回し者でもありません。
しかしアンケートに答えるときは「前回?とか知らないと思う…」と答えてしまったのですが、今サイト見たらSIAF2017、ガッツリとパスを買って回っていた記憶がよみがえりました…あれSIAFだったのか…。

2017は雪のない時期だったので記憶が結びついていなかったのもありますし、会場も今回みたいに「ザ・わかりやすい!観光地近辺!」って感じじゃなかったのです。2014時も雪がない時期だったためか、ランドマーク的なところも含みながらも「それちょっと…微妙に気力要るな…」という感じの会場が高頻度で混じっていた様子。
つまり、札外道外からの観光客にとってここまで身近で気軽に回りやすいSIAFとしては、今回が最推し!!となります。

ということで、この記事はイチSIAFファンによるものと受け取っていただければ幸いです。アクセスが良く迷わない立地が増えさらに身近になったSIAF2024!みんな行こうぜ!

(おまけ)
アンケートに答えたらもらったシールがカッコよかったです。会場によっても違うかもしれないし、複数デザインあったりするのかもしれない。回答を頼まれたらぜひやってみて。

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