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極東の "end of the day"

ことの発端

副業でフリーライターをしています。
先日、ひょんなことから、海外企業のお仕事をすることになりました。

打診、契約、専用サイトへの登録などがあり、いよいよお仕事が開始となったとき、担当者から送られてきたタスクのメールには

「納期:〇月〇日 "end of the day" 」

と書かれていました(実際の文面はすべて英語)。

このお仕事の依頼主たる会社さんは契約書によれば中国が本拠地ですが、私が日本在住であることを知って依頼しています。
報酬の通貨単位は米ドル、やりとりの言語は英語です。

"end of the day" って、どこ時間の?

"end of the day" 夕方5時説

もしかしたらビジネス慣習として、こういう言い方をするときは発信者の時刻と考える、というようなルールがあるのかもしれません。そう思い検索してみたところ、なんとさらなる深みにはまることとなりました。

ネットの情報によれば、本来この表現はイギリスで金融機関の終業時間を指して使われ始めたものなのだそうです。
では由来から離れたビジネス慣習としてはどういう意味になるのかというと、これがバラバラ。

・一般に終業時間を指すとするもの。17時または18時
・どこの人が発言しても、タイムゾーンを常に世界標準時(UTC)で考えるとするもの
・通常は依頼者のタイムゾーンで考えるとするもの
・昼夜問わず働いている場合や営業時間が極端に長い場合などは、「その事業者の固有の終業時間」や、文字通りの「その日(24時まで)」を指すこともあるとするもの

英語のビジネス用語には明るくないため、調べる前は文字通りの「その日の終わり=24時」は前提と思っていました。なんてこった、タイムゾーンの問題だけでなく、17時締切の可能性もあったのか…!

そして最後には
・結局何時なのかは、相手に聞いてみないと分からない

どうやらこれが最終結論のようです。

私は何時までにタスクを返せば許されるのか

聞くしかない、と言われても、締切は目の前、時刻はすでに夕方。尋ねるメールを作成して返信を待っていたら期限を過ぎてしまいそうです。

調べた中では24時よりも終業時間説の方が多かったのですが、依頼が来た時間から考えて日本時間の17時はなさそうでした。というか、万が一17時説だった場合、"end of the day" を気にし始めた時点ですでにもう目の前で、絶対に間に合わないことが確実。ここは夜中12時説に賭けるしかありません。
私はフリーランスとしてこの仕事をしているので、フリーランス=昼夜問わない=24時説も十分にあり得ましたし、相手も英語ネイティブではなさそうなことを考えれば "end of the day" を文字通りに捉えている可能性も高そうです。

少し状況を整理すると、現在あり得る可能性は全部で以下のとおり。
・日本時間の24時
・中国時間の24時=日本の翌1時
・世界標準時の24時=日本の翌9時
・日本時間の17時または18時
・中国時間の17時または18時=日本の18時または19時
・世界標準時の17時または18時=日本の翌2時または3時
・実はメールの送り主(担当者)も国際的にリモートで働いており、上記のいずれでもないタイムゾーンである

このうち、日本時間及び中国時間の17時・18時は間に合わないので捨て去ります。最後の選択肢も考え始めるとキリがないので放り出すことにします。
すると、日本時間ベースでの締切は、24時、1時、2時または3時、9時のどれかです。

ええい、では日本時間24時で出しておけば問題あるまい!私も寝たいし!
……と、結局はまさかの力技で乗り切ったのでした。日本が極東で良かったとこれほど心から思ったのはおそらく人生初です。

答え合わせ

しばらくして、ワーカー用のマニュアルがメールで届きました。いかんせんプロジェクトが先行していたので、そのあたりの手続きは並行して行われていたのです。

そこではスケジュールを説明するにあたり "end of the day" の表現が使われ、その後に「中国時間で」と明記がされていたのです!

17時想定であれば受領してもらえないか何か言われるかしたでしょうから、あのときの "end of the day" はどうやら「中国時間の24時」だった模様。思いがけない形での答え合わせとなりました。

今思えば、聞く余裕はあった

実は英語で仕事の全部をしたのはこれが初めてでした。
一応は英語ができることになってはいるものの、日本で生きていると普段それほど使うことはなく、すっかりなまり気味。しかも日常会話ならともかくビジネスのやりとりをするのはとりわけて不慣れなため、お互い母国語ではないとはいえ失礼のないようにというのは、かなり気を遣っていました。

しかし慣れとは面白いもので、2週間くらいやりとりをしている中で英語ビジネスメールの呼吸がつかめるようになり、忘れていた単語なども戻って来てくれて、あまり深く考えずに脳から直結で返せるようになりました。相手の返信ペースも呑み込めてきました。
その状態で振り返ってみると、あのとき「締切はすぐそこで、確認している時間がない」と思ったのは不慣れゆえのことであり、実際には確認する余裕はあったかもしれないなと思います。

おそらく答えは中国時間24時でファイナルアンサー。でも、今度同じ会社さんから依頼があったときは、「前から気になっているのだけれど」と一言聞いてみたいです。


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