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透明日記「夜中に本、昼間に詩」 2024/04/10

春風に
ねじれた天パ
アムロ・レイ

きのうは眠れなかった。身体は燃えて思念は巡り、暗闇の床から笑いが漏れた。心はぽっかり晴れわたり、ふくらんだ空気が胸のうちに響いてうるさく、目が冴える。目は冴えるものの、暗い部屋で特にしたいこともない。

部屋にぼんやりと灯りを点ける。就寝を諦めて目覚めたときの部屋はとても静かで、自分の存在が部屋に合わない異分子のように感じられる。部屋が自分を追い出したがっているように苛立っている。あの、とても無口な部屋が、まぶしいと抗議していた。

しゃあないから社会史の本を読む。童話をよく読んで、伝統的な心の在り方を見出そうという研究方法があるらしい。中世ヨーロッパに息づく、時間と空間の意識をグリム童話から取り出すという。

昔の人の心の在り方を思うと、途方もなく遠い。果てしなく届かない。地獄や天国に続く道が、現実世界のどこかにあると信じられる感覚。自分の位置を俯瞰する大きな地図を知らずに生きるというのは、世界が広大に感じられるものなのだろうか。未知の世界に包まれて、外界に対する妄想には際限がないだろう。

現実と妄想が入り混じり、その全体を世界として受け止める。この世とあの世がすごく近い。

むかしむかしの感覚を想像しているうちにぼうっと眠くなったので、メガネを投げて寝ることにした。

昼、散歩する。桜が咲いていた。坂口尚と宮沢賢治に影響されて詩を書く。

「春のひかり」
地に降るひかりはひとひらのひかり
さいわいみたいな欠片のひかり

宇宙のすみの暗がりで
ちっぽけな太陽がひかりを投げる
ひんひんひんひん
ひかりは駆けて闇を貫き
銀河の夢をささやいて
さびしい闇をどこまでも飛んだ

地に降るひかりはひとひらのひかり
さいわいみたいな欠片のひかり

かすかなひかりのひと筋ばかりが
地球をつつむ大気にくだけ
ひらひらと地表の万象に降りそそぐ
地の草は ひかりにぬれて
銀河の夢にいのちがふるえ
葉のうえに ひかりの音楽をやどした

地に降るひかりはひとひらのひかり
さいわいみたいな欠片のひかり

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