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透明日記「二度寝」 2023/12/19

二度寝した。夢を見た。大学の小さな教室でみんなが何かを書いている。自由作文のようで、横を向いて座ってるやつもいる。なんか空気が重い。教室の引き戸の窓から、その引き戸の外側に張り紙がしてあるらしい。張り紙がひらひらして文字の上部一部分が見える。喪という大きな字の一部だ。

どうやら、同じ学科の女がジェットコースターから落ちて死んだらしい。泣く姿が想像できないあいつが泣いている。それで気付いた。みんなは死んだ女に関する思い出を整理しているらしい。教壇から寝癖のすごい知らない先生が俺を睨んでいる。俺は遅れてやって来て紙もなく、周りをキョロキョロ見ているだけだ。そんな態度が死への冒涜に見えたのだろう。嫌な夢だった。

目が覚めると、部屋には異常な静けさが反響していた。予定した行動を置き去りにして、食パンを焼く。その間に卵を四角いシートみたいに焼く。湯も沸かす。焼き上がったトーストの上でマヨネーズとからしをかき混ぜ、四角の卵にトーストを裏返して乗せる。フライパンを裏返して皿に盛る。コーヒーも入れる。

朝食。冷蔵庫が唸っている。単調な機械の雑音が部屋を一層静かにする。時が止まったような室内。焼いた卵の意外な柔らかさとコーヒーの温かい香りだけが、辛うじて時間を生きたものにしている。

ボレロのリズムを流しながら、覚えたことを振り返る。一区切りしてタバコを吸う。

外は雲が広がり細かい雨が降っている。室外機のモーターは薄く高い音を出す。プロペラはカタカタと機械らしく振動する。湿気の具合か、タバコの煙がみずみずしい。そう思う俺の様子を雀が見てる。近所の老人ホームから何かを確認するような意味のある声が聞こえる。遠くの方では子供が意味不明の鋭い叫びを上げている。どこかでトラックがピーッ、ピーッと。ヘリコプターは雲を響かせて。明るい雲の昼下がり。

夜、静かに生きる。

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