見出し画像

『伝染るんです。①』(文庫版) P11左〜マーガリン幻想〜

 それはマーガリンを塗っているときだった。フォークでは爪の間にマーガリンが残る。今度からナイフにしよう。だから、それはマーガリンを塗っているときだった。その少女は飽きもせず同じ電車に乗っている。昨日からずっと何遍も。ぼくの頭の中で。その少女と目が合ったとき、ぼくは永遠の風景となって黄昏れ続けた。邂逅。邂逅に次ぐ幻視。少女偶像の再生産。それは、マーガリンを塗っているときだった。ぼくはフォークで少女のパンツを下げた。夏の夜中のとある妄想の果てに。ぼくはマーガーリンを彼女のアソコにピーしたりピーしたりした。なお、それはマーガリンを塗っているときだった。頭の中のマーガリン畑の倉庫の中、藁を積んだ所で。太陽は板の隙間から彼女に永遠をまぶしつつ、ぼくの心を煉獄に閉じた。偶像のぐうぐう性は全く正しく、ぼくは清きナイフでペニスを落とした。切れ味は誠に悪い。
 幸い、すべてはマーガリンを塗っているときだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?