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透明日記「春のゆるい日」 2024/04/17

昼食後、日陰になったベランダで毛布が揺れるのを見る。空は青白く霞んで静かな雲を流している。近隣で金属を叩く音、背景にはぼやけて響く飛行機の騒音。中学校のチャイムは薄く伸び、ゴミ屋のメロディーが日常を醸す。外壁工事の灰白色のメッシュシートが風を孕んだり逃したりして、時間のゆるい流れを見せる。

昼間のゆるやかな静けさに身をひたす。どこにでもあるような退屈な風景にやすらぐ。退屈な風景の断片は普遍的な空気となって、時代を超えた人間の眼差しを孕む。腹を満たし、日陰でやすらぐひとときに、ふんわりとした春の風が肌に染み入る。

リビングにうつ伏せになる。カーペットに沈みながら、目を閉じると意識がまぶたの闇に落ちていく。冷蔵庫のうめき声が部屋に響いている。コンプレッサーの太い音の裏側で、サーっというパイプに水が流れるようなノイズが散らばる。多角形のノイズが無数に散乱しているように聞こえる。

壁の時計はコツコツと時を刻む。歯に何か詰まったように、小さいコの後にコッと言う。ココッ、ココッ。年季の入った中年の声。

春、経験の浅い雀が喋りかけてくる。非対称なコミュニケーションを楽しむ。

「おれはご飯を食べて育つんだぞ。お前はもう大人だ。それ以上育たないだろ。未来あるおれにご飯をよこせ。持っているんだろ。知ってるぞ。よこせ。」

「ない」と言っても「よこせ」と言う。言葉が通じない。人間は雀の言葉がかろうじて分かるというのに、雀は人間の言葉をまったく知らない。人間からはエサを通さずには何も伝えられないらしい。

夜、ダーウィンが来た!のダーウィンが来ちゃったの回を観る。白いカワセミの色合いがよかった。カワセミの構造色の網目構造にも驚いた。オケラの手の形と鳴き声もいい。

そんなことより、高所作業車からエイの群れを撮影したり、360度の水中カメラや音の出所を可視化するカメラが出てきたり、撮影や調査段階で出てくる技術的な見どころも多い。

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