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透明日記「詩を書く」 2024/04/22

詩を書く。

「信号待ち」
自転車が信号を待つ
じじいがタバコに火をつける
子どもは母と手をつなぐ

車が通り過ぎ
車が通り過ぎ
車が通り過ぎる

ぼやけた雲が街をおおう
交差点は色を失い
灰色の風景がわたしをこまかく切り裂く

一滴の血さえ噴き上げず
肉片のわたしはアスファルトに染み
路上の小さな突起となった

「女のうどん」
初対面のさびしい女が
かしこそうな教科書を肘で揉み
細切りにしてうどんを作り始めた
うどんは関西風の出汁につけて
おれの前に差し出された

むずかしい文字が浮いている
まずそうだった
おれは黙ってうどんを食べた

出汁は透き通っていて美味い
うどんはダメだ
さびしい女のうどんは
戯言みたいな味がした

「卒業証書」
だだっ広い大地に巨大なちんちんが生えた
聳え立つちんちんの先端は禍々しく曲がっている

年度末、空から一枚の巨大な紙が降ってきた
すごい大学のすごい卒業証書だ
巨大なちんちんは待ち構えていたかのように
ビンっと張り詰め
先端で卒業証書を突き破った
大地はふるえ、辺りには空を割る轟音がひびいた

ちんちんは卒業証書に包まれ
先端だけが顔を出し
かなしそうに天空で萎れた

「好きな言葉」
好きな言葉はノーパンしゃぶしゃぶ
ふざけて言ってるわけじゃない

好きな言葉はノーパンしゃぶしゃぶ
出会うはずのない二人だった
出会ってはいけない二人だった
日本滞在中に出会ってしまった
ノーパンとしゃぶしゃぶ

ノーパンはビーチに麻薬を売りに来た
しゃぶしゃぶはアニメ好きのオタクだ
違法と合法のサブカルチャー

ノーパンは朗らかに、歌うように話す
しゃぶしゃぶは早口で、アニメの話ばかりする
話がまったく噛み合わない

ノーパン・違法:しゃぶしゃぶ・合法
ノーパン・朗らか:しゃぶしゃぶ・早口
あっちもこっちもチグハグだ

好きな言葉はノーパンしゃぶしゃぶ
なにが互いを惹きつけたのか
いまでは理想のカップルのように見える

好きな言葉はノーパンしゃぶしゃぶ
四回も言ってしまった
恥ずかしい

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