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透明 2023/08/17

はてさて、流れていく。流れるままに流れていく。月日のように流れていく。

世界は鋭い爪を持っているようだ。

勉強中の私なんかは簡単に勉強から剥がされる。勉強と私との間には隙間があって剥がしやすいのだろう。それに粘着力も一粒の米ほどの粘着だ。

剥がされそうなとき、遊び半分に抵抗する。俺にはこれしかないんだ!俺を勉強から引き剥がさないでくれ!放っておいてくれぇ!と。そう念じると、世界も気が引けるのか、鋭い爪を引っ込める。心どこかで引き剥がしてほしい私もいるのだけど。人間の意志はよく分からない。念じてみると勉強に向かう気持ちも芽生える。仕方ないから、勉強をする。

ただ、そんな抵抗の効果は一時的なものらしく、しばらくすると勉強に飽きる。飽きて風呂に入る。勉強をする。飽きて洗い物をする。勉強をする。飽きて飯を食う。アニメを観る。漫画を読んで、本を読む。

ああ、流れていく。

本にも飽きて空を見る。流れる雲がいじらしい。カナブンが物干し竿を点検している。蜂がベランダのパイプの中に入っていく。ハエが飛ぶ。一秒だけ指に留まる。ハエは赤い色素を持っていた。雀が私を見る。若い雀だ。ベランダでも、それなりの賑わいがある。動いてるものは愛らしい。

爪で剥がされた私が見知らぬベランダに流されていく。

流れの終わりに私の勉強が待っている。意地の悪い笑顔で迎えてくれる。勉強もまた、愛らしいやつだ。また私は勉強から剥がされるだろうけど、勉強はちゃんと待ってくれている。そう思うようにする。

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