マガジンのカバー画像

New体育論-Management Perspective-

49
小学校で体育を指導しながら、スポーツ産業のマネジメントを学んだ私が、スポーツが発展するためにあるべき体育の姿を様々な切り口から解説するシリーズ。これまでにはなかった「新しい体育の…
運営しているクリエイター

#ゲーム

体育は「study」か「play」か

体育をなんとかしたいと考えている教員はとても多い。積極的に研修に参加して専門性を高めようとしているモチベーションに満ち溢れた教員は、体育にとって希望の光である。私もその中の一人だが、いざ研修会に参加してディスカッションをすると、多くの場合で次のような質問がとんでくる。 「評価はどのようにしたらいいのですか?」 「学習カードはどのように活用していますか?」 「楽しい体育にしたいけど、どうしても技の指導もしなくちゃいけなくて…」 非常にまじめである。まじめといえば聞こえはいい

「ルールを守る」だけで本当にいいのか?

体育では、スポーツやゲームを通してルールを守ることの大切さを伝えなければならない。それは多くの教員が無意識に、あるいは非常に高い優先度をもって指導していることだろう。しかし、本稿はあえて「ルールを守る」ことを批判的に捉えたい。先日読んだ川谷茂樹氏の「スポーツにおけるルールの根拠としてのエトスの探求」という論文が非常に重要なインプリケーションを与えてくれた。やはり「エトス」がキーワードになるのだが、その詳細は後述するとし、先に具体的な事例から考えたい。 次の4人の行為を、あな

ベースボール型の中でも「野球」が特殊なワケ

体育の授業でも毎年必ず扱う「ベースボール型」とよばれるゲーム。最も代表的というべきはやはり「野球」だが、他にも「キックベース」、「クリケット」、「Baseball5」など多様にある。これらはサッカーやバレーボールなどの他の球技とは違う「型」として区別されているが、一体ベースボール型とは何が特徴なのだろうか。そして、その中でも「野球」という一大スポーツがベースボール型の中でも特殊であるとはどういうことか。 「攻撃」と「守備」まず、スポーツに限らず「ゲーム」とよばれるもの一般に

『「わざと負けて」企画』が語る勝利の意味

スポーツの文脈において「勝利」は常に議論のタネとなっている。オリンピックに出場するアスリートや日本一を目指す学生など、スポーツをする選手がみな勝利を目指すことは言うまでもない。その一方で、「勝利至上主義」といった言葉で、過剰な競争やそれに向けた過酷なトレーニングなどスポーツの競争的な側面に批判的な声もある。 「スポーツで勝利を目指すことはいけないのか?」 これに対して「いけない」と答える人はおそらくいないだろう。しかし、「勝利以上に大切なことがある」と答える人もかなりの数

「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」はどう違うのか?【後編】

学校体育では、様々なスポーツを「教材」として活用し、運動スキルの向上や人間的成長などのベネフィットを子供にもたらすことが目指されている。中でも「ゲームの楽しさ・面白さ」を伝えるために、球技の扱い方が重要とされている。世の中にはサッカーや野球など、数多くの球技が存在するが、学習指導要領では、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」としてそれらを分類している。 では、それらの「型」は何がどう違うのか?それぞれの「ゲームの楽しさ・面白さ」とは何か?本稿はそれらを明らかとし、体育

「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」はどう違うのか?【前編】

学校体育では、様々なスポーツを「教材」として活用し、運動スキルの向上や人間的成長などのベネフィットを子供にもたらすことが目指されている。中でも「ゲームの楽しさ・面白さ」を伝えるために、球技の扱い方が重要とされている。世の中にはサッカーや野球など、数多くの球技が存在するが、学習指導要領では、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」としてそれらを分類している。 では、それらの「型」は何がどう違うのか?それぞれの「ゲームの楽しさ・面白さ」とは何か?本稿はそれらを明らかとし、体育