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ラーゲリより愛を込めて

瀬々敬久監督作品「ラーゲリより愛を込めて」を観た。二宮和也、北川景子主演、松坂桃李、安田顕、桐谷健太などが出演している。第2次世界大戦後、シベリアに抑留された日本兵の物語だ。

ストーリー

終戦直前に日ソ不可侵条約を破り、満州へと攻め込んだソ連軍。日本兵達は捕虜としてシベリア奥地へと送られ、強制収容所(ラーゲリ)で過酷な労働を強いられる。冬は零下数十度にもなり、食糧も十分ではない中で亡くなっていく者も多い。日本に帰るを待ち侘び、家族と再会することを唯一の糧として過ごしている。

山本幡男はロシア文学が好きで収容所で通訳をしている。終戦とはいえ、収容所では軍隊での階級が幅をきかせており、山本は元上官から疎まれ、果てはいわれのないスパイ容疑で25年の刑を受ける。絶望の中でも最後まで希望を持つよう周囲を励まし、明るく振る舞う山本に感化され、収容所の雰囲気も変化していく。

日ソ国交回復により、シベリアに最後まで抑留されていた者たちも帰国の途に着くことになる。その中には山本の姿はない。そして、山本の残された家族にはソ連の検閲をくぐり抜けて遺書が届くのだった。

シベリア抑留

1945年の終戦から元日本兵が長らくシベリアに抑留されていたことは知られていることだ。当時は敗戦のため仕方のないと受け止められたかもしれないが、強制労働は戦勝国であっても許されることではない。

そして、日本に帰国することなくシベリアに骨を埋めざるを得なかった方々の無念さを思うと胸が痛む。また、映画でも生々しく描かれた赤化教育もあり、無事帰国した人たちも「シベリア帰り」として色眼鏡で見られることもあったようだ。

映画の中でちらりと映る新聞に「もはや戦後ではない」という見出しが見えたが、これは1956年7月の経済白書の文句のようだ。そんな言葉が新聞におどった後になって、ようやく帰国したシベリア抑留者がいることを考えると、「あまりにも長すぎる」という感を持たざるを得ない。

映画を見て

この映画を見ると、本来なら救うことのできた命や元気なうちに身内の姿を見ることができなかった抑留者の悔しさをひしひしと感じる。それと同時に、主人公山本幡男の最後まで希望を捨てない生き様に胸を打たれるのだ。

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