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百年の命〜前編〜

銭亀は大きな川で、親や兄弟達と仲良く暮らしていました。

銭亀の一番の友達はカモメ
でもいつも喧嘩ばかりしています。

喧嘩の原因は、銭亀が大の人間好きということ。

人間が大勢いる場所ばかり好んで遊ぼうとするものだから、カモメはいつもイライラムカムカ。

そして銭亀に怒鳴るのです。

『このバカ亀!あまり人間に近づき過ぎると、今に人間の垂らした釣り針に引っかかって食われちまうぞ!』

しかし、人間好きな銭亀にとって、そんなことは余計なお世話です。
それでも少しだけ首を縮めて言いました。

『そ、そんなことにはなりませんよぉだ!
 だって、人間は良い奴だもん。
 亀を…食べたりはしないさ。』

カモメは銭亀のお人好しさに
ますます腹を立てて怒鳴ります。

『お前は本物のバカだ!人間は亀なんか玩具くらいにしか考えてないんだぞ!そんな風に懐いてると、今に殺されるぞ!』
そしてカモメは飛び去ります。
いつもいつも、その繰り返しです。

季節は春。
桜も散って、陽射しも強くなりかけた頃。
銭亀は、カモメの心配していた通りになりました。
人間の男の子の垂らした釣り針に引っかかって、吊り上げられてしまったのです。

男の子はコンビニの袋に銭亀を入れて、家に連れて帰るつもりだったのでしょうか。
銭亀はひっしにもがいて、自分の力でコンビニの袋に穴を開け、そこから逃げ出しました。

銭亀が逃げ出した場所は、銭亀の全く知らない場所でした。
道は固いアスファルトで、車がたくさん行き交っていて、とても危ない場所でした。

銭亀は何がなんだか分からなくなって
危うく車にはねられそうになりました。

でも、その寸前のところで、走ってきた女の子に助けられ、車のない場所へ逃れました。

女の子は銭亀をとても気に入ったらしく
『もん太』と名付け自分の服の大きなポケットの中に
もん太を入れて、家に帰りました。

女の子はよく見ると8歳くらいで、学校帰りだったのか、背中に赤いランドセルを背負っていました。

女の子が家の扉を開けると、女の子のお母さんが出迎えました。
『おかえりなさい』
女の子は出迎えたお母さんに
『亀を飼いたい』
と言いました。
そして大きなポケットから亀を取り出して見せました。
『名前も決めてあるの。
 もん太っていうのよ!』

見ると小さなかわいい子亀。
お母さんは
『お前がちゃんと面倒をみるならいいわよ』
と言って、亀を飼うことを許してくれました。

ザリガニでも飼ったことがあるのか、もともと女の子の部屋に置かれていた水槽の中に、もん太は入れられました。
そうして、もん太と女の子の生活が始まったのです。

もん太は大きな川に住んでいたこともあって、小さな水槽の中が窮屈で、よく逃げだそうとしました。
でもその度に、女の子が悲しそうな顔をするので、そのうちにもん太は、小さな水槽に慣れようと努力するようになりました。

退屈な退屈な水槽の中の生活。
でも女の子はもん太のことを
とても大切にしてくれました。
学校での色々な面白い話もしてくれるし
もん太の気持ちを分かろうと努力もしてくれました。
そしてそんな女の子のことを
もん太は大好きになりました。

そうして三年の時が流れて
8歳だった女の子も11歳になりました。
小さかったもん太も、かなり大きくなりました。

〜『百年の命』前編終了〜

社会不安障害の姉との約束を守るために
今をどう生きるかを共に考えていくために
20年前の約束を果たそうと再生した
姉の作品『百年の命』
前編、中編、後編に分けて投稿したいと思います
移りゆく時代の変化や社会に適応できなくても
まるで少女のような感性のままで
今在る幸せを保っている姉の世界に
少しでも共感して頂けたら
どうか温かいコメンを宜しくお願いします🙏




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