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令和元年司法試験・民法・設問2関連基礎知識

令和元年司法試験・民法・設問2関連基礎知識
【賃貸借】
601条
当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対し賃料と返還することを約することによって、効力を生ずる。
語呂→賃貸借の部屋を用意するとは無礼(601)な
【賃貸人の地位の当然移転】
1、不動産賃借権に対抗要件が具備されている場合
2、不動産の賃貸人が自己の所有する賃貸物件を第三者に譲渡した場合、賃借権が対抗要件を備えたものであるときは、≪賃貸人の地位が第三者に当然に移転し≫、その移転に第三者の承諾を要求されない(605条の2第1項)。
3、賃貸人の地位移転は、契約上の地位の移転を定めた539条の2の特則である。539条の2は、契約上の地位を譲渡とする場合、契約の相手先がその譲渡を承諾しなければならない旨を規定している。これによれば、不動産の売買において、賃貸人の地位を移転する場合は、販売の相手先の承諾が必要になるが、不動産賃貸借に対抗要件が具備されているときは、不動産売買契約に伴って、賃貸人の地位は賃借人の同意なく賃貸人の地位が移転する(605条の2第1項、605条の3)。
4、605条の2第1項←最判昭和46年4月23日の判例法理の条文化
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。
【事案】
 原告は、昭和23年5月、被告より東京都荒川区尾久町宅地を、建物所有の目的で賃借し空地のままにしてあつたところ、被告は、昭和36年11月、本件土地を訴外高橋正三に無断で売り渡した。原告は、本件土地を売渡したことによつて、本件土地につき対抗要件を具備していなかつた原告は本件借地権を喪失せしめられたとして損賠。
【合意による賃貸人の地位の移転】
1、対抗要件が具備していない不動産賃借権でも、不動産の譲渡人と譲受人との合意で賃貸人の地位を賃借人の承諾なく移転(605条の3前段)
【譲受人が賃借人に賃貸人としての地位を対抗する方法】
所有権の移転を登記しなければ、賃借人に対抗できない。賃借人の賃料の二重払いを防止する趣旨←最判昭和49年3月19日
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕 事案は大阪市西区の宅地売買取引。
賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない。
【賃貸人の地位の移転と敷金の承継】
1、敷金返還義務(622の2第1項)、費用償還義務(608条1、2項)
は、譲渡人から譲受人に移転する。
2、注意=賃借人の地位の移転→旧賃借人の敷金は、新賃借人に承継されない。
ここは逆!なぜ、細かな規定を設けなかったのか、不思議。
【将来債権の譲渡】
466条の6
債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
語呂→将来のことはホームルーム(466の6)で決める。
【注意―具体的な要件は明示されていない】
1、始期・終期の明確さ→債権が発生する始期と終期が明確されていること→将来債権の要件の一つ。
 「俺が大人になったら稼ぐことになるが、その半分をお前にやる」と言っても、いつからいつまでの収益なののか不明なので、正式な契約になじまないよね。
2、公序良俗違反→(1)譲渡人や、(2)他の債権者に不利にならないか。
(1)将来債権の譲渡が、譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当の範囲を超えていないか。
→将来債権を譲渡したけれど、いざ、その債権を払うことになったら、従来の商売ができなくなくなることは公序良俗違反。
(2)将来債権の譲渡人の他の第三者に対して、将来債権を譲渡したことで、債務を払えなくなることになるのは公序良俗違反
【参考判例】最判平成11年1月29日
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
1. 将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の締結時において目的債権の発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然には左右しない。
2. 医師が社会保険診療報酬支払基金から将来8年3箇月の間に支払を受けるべき各月の診療報酬債権の一部を目的として債権譲渡契約を締結した場合において、右医師が債務の弁済のために右契約を締結したとの一事をもって、契約締結後6年8箇月目から1年の間に発生すべき目的債権につき契約締結時においてこれが安定して発生することが確実に期待されたとはいえないとし、他の事情を考慮することなく、右契約のうち右期間に関する部分の効力を否定した原審の判断には、違法がある。
【事案】秋田県の医師が将来、発生する診療報酬債権を興銀リースに譲渡事案。この診療債権を国が国税滞納分を差押えた事例。最高裁では、将来債権の譲渡について判断した。
Q これまでは将来の1年分しか譲渡が認められていないと考えられていた、将来発生する診療報酬債権の譲渡について、平成11年1月29日に最高裁第3小法廷で新しい判決が出たそうですが。
A これは譲渡人(医師)が借金を返すため、第三債務者(社会保険診療報酬支払基金)から支払われる将来の診療報酬債権を譲受人(リース会社)へ8年3か月分を予め担保として譲渡する契約について、最高裁が有効と認めたものです。

Q これまでの判例は、どうなっていましたか。
A 最高裁第2小法廷の昭和53年12月15日の判決が、契約締結後1年の間に医師に支払われる診療報酬債権を目的とする債権譲渡契約を有効としたため、これまではこの判例を根拠にして将来の債権譲渡は1年間に限るように理解されていました。しかし今回の新判決はこれを否定して、昭和53年の判決は一般的な基準を明らかにしたものではないと明言しました。

Q 新しい判決の意義はどういう所にあるのでしょうか。
A 新しい判決自らがいうように、「将来有望でありながら、現在は十分な資産を有しない者に対する金融的支援が可能になる」点に意義があります。身近な例でいえば、若い医師が診療所を開設するため借金したいとき等です。

Q この判決はこれからどのように活用されると思われますか。
A 経済界では債権の流動化に役立つものと考えられています。特に平成10年10月に施行された「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」により認められた債権譲渡登記を利用することにより、その効果は大きくなります。

Q 将来の債権はどのように譲渡すればよいのでしょうか。
A 譲渡の始期と終期を明確にし、譲渡の目的債権を特定しなければなりません。

Q 将来見込みに反して債権が発生しないときはどうなりますか。
A 債権が見込みどおり発生しなければ、債務不履行として譲受人が譲渡人の法的責任を追及し、回収ができない額は譲受人の損となります。

Q 譲渡するについては、何の制約もないのですか。
A そんなことはありません。不当な内容だと無効になります。契約締結当時の譲渡人の資産状況等から、「期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には、右契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されること」があります。

Q 具体的にいうと、どういうことですか。
A 例えば、将来の収入を長期にわたって全部譲渡させて、譲渡人の生活が成り立たなくさせるようなことは許されないのです。
【将来債権が譲渡された後、賃貸不動産が譲渡された場合の賃料債権取得】
最判平成10年3月24日
【事案の概要】 大阪の不動産事件。自己の所有建物を他に賃貸している者が第三者に右建物を譲渡した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転するが、建物所有者の債権者が賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した後に、右所有者が建物を他に譲渡し賃貸人の地位が譲受人に移転した場合には、右譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができないと解すべきであるとした事例。
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。
(令和2年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦へ)

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